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ひとり寿司第34章パート1

「ひとり寿司」をブログに連載します!

ひとり寿司

寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。

***

34

「ヘーイ、レックス、友達の——」

「今はやめて、リッチ」レックスは、ドアを押えてくれているリチャードと、その痩せた男「友達」を過ぎ、足を踏み鳴らして祖母の部屋の前まで行った。

「おいおい」リチャードは、彼女が過ぎていく前に腕をさっとつかんだ。

「おばあちゃんに挨拶しなきゃ」

「ジェンのお母さんと話してる。待ってくれるよ。それで、紹介するよ——」

「こんにちは」レックスは手を出した。ミスター・スキニーは、ベタベタした手でその手を握った。

「レックスです。リチャードが何て言ったか知らないけど、私は興味ないから」キッチンへ向かった。

「レックス」ありがたいことにミスター・スキニーを居間において、リチャードが追いかけてきた。

「頼むよ、今日だけは俺に優しくしてくれ。男の子の日だから」

「違う、五月五日は『こどもの日』よ。男の子の日じゃない。つまり、あなたに親切にする必要はないって意味。一体何なのよ。あんな人たちがあんたの男友達なの?」

「誰のことだよ」リチャードは、突然、リノリウム(床の材料)に魅力を感じ出したようだ。

「まるで男性エスコートサービスね」

「ええっ?」彼の男らしさをついた一撃が、明らかに彼を突き刺したようだ。「違う。俺は社交的なんだ。お前もちょっと見習ったほうがいいぞ」

「そこらの落伍者を紹介しといて、私に説教しよう、っていうの? どんな人なのか、ほとんど知りもしないくせに」

「そんなこと、どうして分かるんだよ? 親友かもしれないだろ」

「あなたの友達はみんな見てきた。あなたみたいな人ばかりよ。居間でミスター・スキニーと一緒に死にたくないでしょ? 叔父さんのバースデー・パーティの食いしん坊もそう、それに——」

「お前の女らしい感性に訴える繊細な奴を探そうとしてるんだよ」リチャードは手を上げて、胸を押さえた。「お前のためと思ってやってるんだ」

レックスは、面と向かって兄をあざ笑った。その朝、エイデンとケンカになって以来初めての、悲しくない感情だった。「他には?」

リチャードは急いで考えようとしたが、金魚のように口を大きく開けただけだった。

「考えてる間に、おばあちゃんに挨拶してくるわ。縁を切られそうだから」

ジェニファーの両親の家の奥にある、テレビのある部屋に入る前から、祖母の声が聞こえた。「トリッシュ、あなたのボーイフレンドはいい子ね。日本語のアクセントがとてもいいわ」

レックスが部屋に入ると、すでにいとこ、叔母、叔父たちがうろうろしている。祖母は隅のウィングチェアに腰掛け、トリッシュはその後ろのソファに座り、ジェニファーはその反対側に落胆したように座っていた。ビーナスはソファの腕にもたれ、つまらなそうにしていた。

ジェニファーと祖母をみると、怒りと裏切りのダムが放たれた。トリッシュのボーイフレンド——彼女を教会から引き離した——を褒めたたえる言葉を聞いて、レックスの体は硬直した。

何故レックスは、いい男性を見つけられないのか? 何故、祖母は、あんな落伍者ばかりを彼女に投げつけるのか? 何故、祖母は、彼女を放っておいてくれないのか? 何故、ジェニファーに裏切らせるようなことをさせたのか? 何故、他の人には親切なのに、レックスには怖いのか?

「ハーイ、おばあちゃん」レックスは数メートル離れて立ち、歯を食いしばったまま話し始めた。

祖母は涼しげに笑った。「あなたの女子バレーボールチームの調子はどう?」祖母が言うバレーボールは、エボラのように聞こえた。

その時、レックスの頭の中でひらめいた。670 AMラジオ局と680 AM KNBR局(「スポーツリーダー」)の違いのように。祖母は、レックスにあの子たちとバレーボールをして欲しくないのだ、全く。

「あの子たちのどこが嫌なの?」レックスは喧嘩腰で一歩進んだ。その感情のほとばしりのために、部屋の中の騒音レベルが下がった。

祖母の鼻が真っ直ぐ上がった。「一体何の話をしてるのか、分からないわ」

「私があのチームのコーチをすることが、何でそんなに悪いことなの?」

「あなたはいつもあのチームのコーチをしてる。私が電話をかけるといつも、コーチをしてるか、友達とバレーボールをしてるわね」

「だから、私のチームをつぶすの?」

「全然、違うわよ」祖母は、うわべの理性と声の美しさを保っていた。「ボーイフレンドを見つけたら、資金を継続するって言ったのよ」

「ボーイフレンドは要らないの」

「つまり、そんなバカげた——」

「そうやって操られるのには、もううんざりなの」レックスは呼吸が早くなり始めた。

「最初は、おばあちゃん、次は、エイデン。これは私の人生よ! 私が自分の時間に何をするかは、私が決めるわ」

「あなたはバレーボールをやりすぎるの。それは女性らしくない。あなたは女性らしくないの」

レックスの、女の子っぽいいとこが、子供の時そうやって彼女をからかうと、レックスは傷ついたものだった。今、髪を綺麗になでつけて香水をふった祖母が言う言葉は、顔を引っ叩かれるようにレックスの心に響いた。「私は今のままでいいの。私は何も悪いところがないの!」

「レックス!」ジェニファーの母親がバッターボックスに入った。「そんな風におばあちゃんに言ってはだめよ」

「私のことをこんな風に扱うのは間違ってる!」

祖母の目はギラギラ光り、頬は赤くなった。「私はね、ずっと前からそうするべきだったように、あなたに接してるの。私の息子があなたを甘やかしたのね。母親のように粗野でガサツになっちゃって」

ジェニファー、ビーナス、トリッシュの三人は、息を呑んだ。

赤いフィルムがレックスの目の前に降りてきた。「もう黙ってて! お母さんのことをそんな風には言わせない!」飛びかかった。

本当に飛びかかったのだ。

祖母は椅子に倒れ込んだ。ジェニファーは驚いて飛び上がり、椅子に落ちた。トリッシュとビーナスはレックスの方へ飛び込み、その腕が祖母の真珠のネックレスがついた首まで届く前に、レックスの体を押さえた。

「レックス!」「レックス、落ち着いて!」

いとこたちの驚いた声で、レックスは我に返った。本当に祖母に怒鳴ってしまった。黙れ、とも言ってしまった。自分の手を見た。幻想を行動に移し、祖母を絞め殺そうとしてしまった。違う、それは本当の彼女じゃない。そのはずだ。だって……

レックスは、倒れないように腕を持ってくれていたビーナスにもたれた。「フェアじゃない! 私のどこが悪いって言うの! お母さんは、綺麗で女性らしかったわ!」

レックスは頭を抱えた。「私だって頑張ったのよ。だけど、ダサ男ばかり! 私のリストは長いの! 男の人とキスもできないんだから、結婚する前に年をとって死んじゃうわ! キスしたいと思った人は、アイクとリンジーのキスを見せようとするし、最低な男だった! おまけに、他に誰も見つけられないんだったら、おばあちゃんは罪のない女の子達を苦しめる、って言うのよ!」

手で顔を押さえ、泣き出した。「それに、体もボロボロ! 垂直跳びは十五センチ落ちたわ! みんな私のことをスポーツしかできないバカだと思ってて、魅力的だと思ってくれる人は、一人もいない! 本当にそうよね。大学のスポーツのチケットを取るしか能がないんだから!」

いとこの一人が、耳をピンと立てて彼女の前にすっと立った。「チケット?」

レックスは無言で彼を見つめたが、ビーナスは、彼の心臓をやりで突くような目で見た。「やめといた方が身のためよ」彼を後ろへ押し返した。

レックスはまた爆発し、大声でわめき始めた。

ビーナスは彼女のあごをつかみ、泣いている途中で口を閉じさせた。レックスはもう少しで舌を噛むところだった。

「行こう、送るわ」ビーナスはレックスの腕を引っ張り、開いた戸口の方へ引きずった。

「だけどあなた、車で来なかったじゃない」ジェニファーは、レックスとビーナスのバッグを渡した。

「レックスの車で行くわ。鍵はどこ?」

不気味なほど静かな居間を出た。レックスは、祖母をチラリとも見なかった。心のはしっこで、一生、犬小屋で暮らすのかと思ったが、もう、どうでもよかった。

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