Thursday, May 19, 2022

ひとり寿司第17章パート2




「ひとり寿司」をブログに連載します!


ひとり寿司



寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。

***


あーあ、お尻が濡れてる。スカートを拭いて、座る前に椅子にタオルを置いた。

彼らは、実はいい人たちだった。レックスの判断が間違っていた。それに、実は意外とハンサム。さらに言えば、彼女と同じぐらいスポーツのことが分かっていた。チコのスタッツや、ピストンズの最新スカウトレポートのことを聞いた時も、すぐにその情報をくれて、そのことについて知的に話すことすらできた。

もしかしたら、ここでボーイフレンドが見つかるかもしれない。自分の部署以外でも、ここにはスポーツを生き甲斐としている男性が山ほどいる。デート相手を探すためにワサマタユに入る必要はない。

ワサマタユに入るために、第一子を犠牲にするつもりもない。

電話が鳴った。すぐに受話器をつかみそうになって、自分の手を叩いた。(急ぎすぎちゃダメ)もう一度鳴るまで待った。「SPZ同窓会リエゾン、レックス・坂井です」

「レックス、ロジャーです。チケットの件、大丈夫だったよ」

「良かった! ありがとうございます、ロジャーさん。スカウトの件は、話しておきますね。いくつかの試合に何人か手配します」そうだ、頼めそうな人はいる。

「じゃあ、そういうことで、ありがとう」電話を切った。

レックスは数人のスカウトに電話をして、折り返し電話を頼む伝言を残した。

返事を待っている間にすることは他にもあったが、心は、今お気に入りのトピック——ワサマタユのトライアウトに戻っていった。テニスボールを空中に投げた。「私は順番待ちリストのどの辺にいるのかなあ?」

テニスボールが床に落ちた。

「誰に電話をすれば分かる?」

テニスボールは黙っていた。

「ワサマタユで働いてる人、誰か知らないかな?」

「ワサマタユ?」グレイがドアから頭を突っ込んで、彼女のナルゲンボトルを差し出していた。「はい、お水」

「ありがとう、そうなの。女子バレーに空きがあるのよ」

「ああ、いとこが男子サッカーのトライアウトに呼ばれたよ」

(すごいラッキー! )「入れた?」

「ダメ、ダメ」

「そうか」(なーんだ)

「空きが出たのはいつ?」

レックスは肩をすくめた。「私が聞いたのは一週間前」

「じゃあ、今頃は順番待ちリストの人たちをスカウト中じゃないかな」

「順番待ちなのにスカウトするの?」

「いとこがそう言ってた。プレイを見てない人は呼ばないって」

レックスは喉が硬くなった。心臓もドキドキしている。あの、二人の白人男性。日系ジムのトーナメントで。ああ良かった。殴って気絶させるようなことをしなくて。考えただけでも恐ろしく、デスクに寄り掛かりたくなった。

(だけど、そんなことしなかったんだから、それが大事なの)「情報をありがとう」しかし、先週の金曜日は試合に出なかった。そんな!

「どういたしまして、週末はどうだった?」

「ESPNを見まくったわ」テレビの前で、少し重量挙げもしたが、トライアウトに呼ばれなければ、何の意味もない。「あなたは?」

グレイは肩をすくめた。「別に。ソファーを飾ったぐらいかな。だけど今度の週末は、バークレーのいとこに会いに行くんだ」

「仲がいいの?」

「兄弟みたいなもんだ」グレイの目は、彼女のオフィスの小さい窓に流れて行った。「ひょっとして、バークレーのAAと最近話した?」

レックスは、このような含みのある言い方を理解するのが下手だったが、興味がなさそうなふりをして、落ち着きがなく彼女のデスクの上に何か模様を描く彼の様子を見ると、目が細くなっていった。「先週、話したわよ」

彼の目は金色の炎のように輝いていた。「今週末のバスケのチケット、余ってないかなあ?」

レックスは……作り物になった気がした。本物じゃない、偽物。グレイは動かなかったが、二人の間に突然、深い割れ目ができて、彼も本物ではなくなったように見えた。そして、気がついた。他人に利用されたくないことに。想像するのも嫌だ。

「出てってもらえる?」椅子にもたれて彼を睨み倒した。

「何か問題でも——」

「三秒以内に出ていかないと、ウォーターボトルを頭に投げつけるわよ、このスライム男」

グレイは小走りで出て行った。

電話が鳴った。外線だ。誰かと話したい気分ではなかった。取らずに交換手に回そうか。いや……誰かとスポーツのことを話したら元気が出るかもしれない。「SPZ同窓会——」

「レックス、ジェニファーよ」

レックスは椅子の中で背筋を伸ばした。「どうした?」

「近くに来てるの——ママが友達のうちで麻雀だっていうから、そこで降ろしたところ。ちょっと早いけど、ランチ行ける?」

なんていいタイミング。「じゃあユニオンで会おう」

***

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Tuesday, May 17, 2022

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Thursday, May 12, 2022

ひとり寿司第17章パート1




「ひとり寿司」をブログに連載します!


ひとり寿司



寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

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17



「レックス。申し訳ない。数週間前に売り切れたんだよ」

気落ちした、一瞬だけ。「ロジャーさん、同窓会で持ってるブロックがよくありますよね。二枚だけ譲っていただけないでしょうか?」

「そうだねえ」ロジャーの声がゆっくりになった。「可能性はあるかもな」

やっぱり。「広告料を少し割引できるかもしれません」

「いや、広告は、もうあまり必要じゃないんだ」

(何だ)「ホームページにプレミアム・ストーリー、っていうのはどうですか? UWのことで強調したいのはどんなことですか?」

「野球チームは調子がいいんだが、席が埋まらないんだ」

「ホームページにストーリーを載せるのはどうでしょう」彼を引き寄せた。

「次の試合にスカウトが来てくれてもいいんだけどね」

分かった! 彼が探っていたのはこれだった。「SPZはスカウトにコネがありますよ」実際、今日は、ウェブサイトに載せられたばかりの高校チームのスタッツのことで、一〇人のスカウトから電話がかかってきた。

「レックス、チケットのことは、ちょっと他の人と話をさせてくれるかな。また電話するよ」

「ありがとうございます、ロジャーさん」電話を切った。有力者が取引を成立させたとき、またはストックブローカーがウォールストリートで成功したときの快感を、今では理解することができた。

レックスはウォーターボトルに手を伸ばした。空っぽだ。

音が鳴らない電話をチラリと見た。ロジャーからコールバックがある前に、水を補充する時間がある。ナルゲンボトルのフタを閉め、通路を通って冷水機の方へ向かった。

キュービクルに座っているグレイの長い足が通路に突き出しているので、それをよけた。サンノゼ州立大学の野球チームのことで、何か深刻なことを電話で話しているようだ。ブラウンのキュービクルからは、彼の声が流れてくる——多分、彼も電話中——ブラウンの足が通路に突き出るのが見えた時には——遅すぎた。

つまずきながら、腕が激しく揺れた。(パシッ!)ウォーターボトルが何か硬いものにあたった気がした。

「ウップ!」

手を突き出したが、薄い仕切りはダンのキュービクルに倒れた。(ゴン!)仕切りがダンの頭に当たる音がした。

「あうっ!」

レックスと仕切りが倒れた。仕切りがダンの体に当たり、レックスはひっくり返った。ウォーターボトルのループを手に引っ掛けていたのだが、その手は乱暴に揺れ、ボトルは突然放たれた。

二つのことが一度に起こった。

キュービクルの仕切りが、ダンを床に叩きつけた。レックスのウォーターボトルは、上部が重くなっている冷水機の方に飛んでった。

仕切りが倒れた。

冷水機が倒れた。

水は事務所の薄いカーペットに浸み込んでいき、海の波のように彼女に押し寄せてきた。そして、洋服の中まで浸み込んできた。

「レックス! 大丈夫?」グレイが来た。一方の腕を彼につかまれ、もう一方の腕はブラウンがつかんだ。二人は注意しながらレックスを引き上げた。助けてもらったことには感謝するが、すぐに片足でバランスを取り直し、彼らの手を解きほどいた。

冷水機のボトルを元に戻して事務所の洪水を止めようと、ダンは走った。「大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ」

「本当に? 怪我してない?」

ダンはこめかみに巨大な赤い傷があったが、彼女のことだけに全注意を集中させようとした。

「そうだよ、君、本当に大丈夫なの?」

「ダン、私は大丈夫だから。あなたは? ブラウン」

ブラウンは腫れたあごをさする手を止めた。そうだ、レックスのウォーターボトルが最初に当たったのに違いない。プリンスチャーミングのように笑顔をきらめかせた。「僕は、全然大丈夫だよ」

うーん、トワイライト・ゾーンに迷い込んだようだ。「一体みんな、どういうこと?」

ダンが瞬きした。「どういう意味?」

「どうして急に親切になったのよ」

グレイは手を胸まで上げた。「レックス、僕らも苦しんでるんだ。そして、同僚として君のことを深く尊敬している」

「いつから?」

「君が電話で話すのを聞いた時から」グレイはウォーターボトルを彼女に渡した。「AAたちは君と話すのが好きなようだね。君、いい仕事しているよ」

彼の目は誠実そうに見えた。レックスは彼の称賛を好意的に受け止めた。

グレイはデスクの上の書類を指さした。「広告の注文、今週だけでも一〇%から二〇%は増えてる」

彼らが気づいていたとは思わなかった。レックスが同窓会リエゾンのポジションをもらったことについて、誰もが癇癪を起こしていると思い込むべきではなかった。

「ダン、タオルを持ってきてあげて。はい、隣のオフィスの冷水機から水を入れてきてあげるよ」グレイが彼女のボトルを取った。

「ありがとう」

「ブラウン、君は彼女をオフィスまで送って」

「いいわ、私は大丈夫だから」通路を戻り始めた。

「はい、タオル」ダンはとてもひたむきに見え、レックスが断らなければ、彼女のお尻の水も拭いてくれるような雰囲気だったので、彼女は彼の手からタオルをとった。「本当に大丈夫よ、どうもね」

「何か要るんだったら、何でも聞いてくれ」ダンは微笑んだ。

「ありがとう」彼女は自分のオフィスに入り、ドアを閉めた。

***

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Tuesday, May 10, 2022

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Thursday, May 05, 2022

ひとり寿司第16章パート2




「ひとり寿司」をブログに連載します!


ひとり寿司



寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

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エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

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**********


「心配するな、っていうのが無理だろ?」エイデンは、折り畳まれた観客席に頭の後ろをぶつけた。

レックスは席を調整して、足を伸ばした。ハイヒールで仕事に行くのは嫌だった——短い時間でも、ふくらはぎとハムストリング筋が痛くなる。「選手だったらこういうこともある、って分かってると思うよ」

「試合を抜けた方が良かったよ」ジェスチャーをしている方の腕が、レックスにかすった。木のブリーチャー席(観覧席)で、彼女は横にずれた。

「ダメ、抜けるのは臆病よ。試合に出たら、最後までやるの。そうやって自分の足を引っ張るべきじゃないわ」

「僕のボールが当たったあの子は試合を抜けた——」

「キャミー? あの子は磁石みたいにボールを吸いつけるの。ウォームアップ中にコートの後ろを歩いてるだけで、ボールを当てられるんだから」

「だって、僕は彼女のど真ん中——」

「あなたはボールを正しい方向に打った。ブロッカーがそうさせてくれたのよ。ボールが飛ぶべき場所は、まさにそこだったの。キャミーはもっと下がって、レシーブするべきだった」

エイデンは、不機嫌に次の試合を見ていた。「残りの二試合も座ってようかな」

「もう、何言ってるの」

レックスの不愉快な声の調子を彼は楽しんでいるようだった。この臆病者を立ち直らせることだったら何でも言う。ヒッターが角ギリギリにショットして、相手チームの後衛センターがボールに飛び込むのを見ながら、レックスは手を叩いた。「あなた、最近良くなったわよ」

無表情なエイデンの顔が少し温かみを帯びた。かすかな笑顔が見えた、と断言してもいい。「そう?」

「うん」

「ここ何週間か、スタンフォードのバレーボールキャンプに行ってるんだ」

「そうなんだ! あれはすごく役に立つわよ。何てったって——」

「ヘイ、レックス」

キンムンが目の前に現れた。全然気がつかなかった。「ハーイ」

彼はいつもの笑顔を見せた。温かいホットチョコレートを飲んで、お腹の中が温かくなるような笑顔だ。「新しい仕事、始めたんだって?」

彼女はうなずいた。「SPZの同窓会リエゾン」

「すごいじゃん。どう? 楽しい?」

「最高よ。大学のスポーツチームのことを調べて、その同窓会の代表と話すだけでお給料がもらえるんだから」

キンムンは笑った。「天国だね。いとこが昔、同窓会の代表をやってたことがある。スポーツですごいお金儲けしてたよ」

変に躊躇気味な彼の言葉が少し引っかかった。彼女はそれを振り落とした。「そうね、SPZのウェブサイトで自分の学校のスポーツの宣伝をしたいみたいよ」

「UW(ワシントン大学)とは話した?」

「ああ、来週電話をかけることになってる。どうして?」

「別に」キンムンはまだ終わっていない試合の方に目を移した。「来週末、シアトルに行くんだ。できればフットボールの試合を見に行きたいんだけど、チケットが手に入るかどうか分からないんだ」

レックスは、チケットを取ってあげることができるだろうかと考えた。電話で話しているときに、フリーチケットをくれると言うAA(同窓会担当者)はいるが、いつもそうなるとは限らない。それに、ワシントン大学の同窓会と話すのは来週が初めてだ。

「まあ」キンムンが笑って彼女を見下ろすと、ホットチョコレート入りのカップがまた温かくなった。「仕事がうまく行っててよかったよ。今日はみんなと食べに行く?」

「うん。チリーズへ行くのよ」

「やった、僕の席、取っといてよ」

「もちろん」

キンムンは、ぶらぶらと歩いていった。

「彼はいい友達なの?」

レックスは、エイデンが隣に座っているのをすっかり忘れていた。「うん、昔からのね」

ただ、今日のキンムンは、まるでレックスに興味があるような様子だった。変だ、違う、心が弾んでいる。それも違うな、変だけど心が弾むようだ。

レックスはそのチケットを手に入れることができるだろうか。

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Thursday, April 28, 2022

ひとり寿司第16章パート1




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スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

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16



エイデンは身体中が痛かったが、なぜか気分はとても良かった。

ジルとのペッパー練習(対人レシーブ)。力強く、いいフォームで動けている気がした。この夜は、もっと自信を持ってレシーブ、セット、アタックができた。土曜日にスタンフォードのバレーボールキャンプにも通っているし、今夜はこれまで以上に日系リーグを心待ちにしていた。

「レックスは?」彼女のことだからとしても、ちょっと遅い。

ジルはボールをレシーブしないで取った。「電話があったわ。残業だそうよ。今日は来ない」

ほんの一秒前と比べて、腕は力強く感じなかった。その場で少しジョギングしてみたが、エネルギーは戻ってこなかった。

(レックスは単なる仲間の一人。そんなに気にするのはやめよう——)

実際、気にしていなかった。全くと言っていいほど。彼女のことはほとんど知らなかった。コートの中にいたりいなかったりする、ただの可愛い女の子だ。それだけ。エイデンは、可愛い女の子に目を留めただけだった。

(こんばん遅くに来るかなあ?)

アタックラインではとても調子が良かった。彼のアタックはもっと正確で、手とボールの間のコンタクトもずっとよく、回復基調を超えるほどいいコントロールだ。それに気づいている人は、他に誰もいなかった。

(レックスだったら気がついたのにな)

そうだ、しかしレックスだったら、打ち損なったアタックも全て気がついただろう。

(彼女のことを考えるのをやめるんだ。名前も思い浮かべてはダメだ)

試合が始まった。エイデンは、最初のパスをそらせた。

エイデンは常に冷静だった——他の選手のように罵声を浴びせることもしない——しかし、自分の顔が、欠けた大理石のように硬くなっているように感じた。

できるはずだ。

「ああ見て、レックスよ」キャロルは、まだ仕事着で、ハイヒールの音を立ててコートの後ろを歩く姿を指さした。

「みんな元気?」レックスは手を振って、観客席に腰を下ろした。

「出ないの?」ジルは睨んでいる審判を無視して、彼女の方を向いた。

「うん、出ない」落胆の表情の中で、口が歪んだ。「うちに服と靴を置いてきちゃった。帰ってたら時間がなくなるわ」

「早く!」審判が、しびれを切らして笛を吹いた。

(そうだよ、早くしよう、みんな)エイデンはキャロルから離れ、ポジションに戻った。一体いつからこんなに負けず嫌いになったのか? レックスの影響に違いない。

その時、エイデンの目に彼らが映った——白人男性二人、リーグでは見ない顔だ。彼らは試合を見ずに、二人だけで立っていた。

レックスを見ながら。

笛が鳴った。エイデンは試合に集中力を戻そうとしたが、それて自分の方に流れてきたパスをもう少しで受け損なった。

「エイデン、取って!」

彼のトスはネットに近すぎて、相手チームのブロッカーはボールを叩き返した。

二人の白人男性のうち一人が、レックスの方を身振りで示した。もう一人がうなずいている。

レックスは彼らに気がついていた。怒っているような、用心深い顔つきのために、表情が暗い。歩いていってパンチを浴びせようか、それとも精神科に電話をして拘束衣を持って来させようか、決心がつかないようだ。

妙なことに、二人の男性はストーカーには見えなかった。アスリートのような体格をしていた。ビジネスカジュアルの服装でなければ、バレーボール選手の中に紛れていただろう。

「エイデン、あなたよ!」

(試合に戻れ!)サーブを受けようと腕を突き出したものの、ネットの近くに行きすぎた。ジルは飛び上がって、叩き上げようとしたが、ネットに引っかかって、落ちた。

二人の男性は出口に向かって歩いていった。筋肉が緩むまで、エイデンは、自分の肩が緊張していることに気がつかなかった。

笛が鳴った。サーブ。後衛がいいパスを送った。キャロルが彼の方に曲線を描くようなトス。エイデンは跳んだ——

エイデンは、ブロックに入ると思われる相手チームのその男を知っていた。長身で、腕が長い。彼を通り越してボールを叩きつけられるとは期待していなかった。

エイデンは腕をスイングしたが、手首を曲げたので、ボールはブロッカーの指の上で転がった。勢いよく回転するボールは、コート中央に素早く落ちた。ウィングの女子二人がそれを取ろうと両側から飛び込んだ。

得点、サイドアウト。

「ナイスショット」ネットの下で、ブロッカーとエイデンは手を叩いた。

「サンキュー」

向こうのサーブ。相手チームは、同じ選手にトスを回した。彼のボールをねじ込めることは期待できなかったが、エイデンはキャンプで覚えたブロックをやってみた。(コートで自分の場所を守ればいいだけ)

(バン!)ボールは手をかすめ、高く弧を描き、パスが楽になった。ジルは、またエイデンにボールを回した。目の端に、前衛二番目の選手が、少し遅れてダブルブロックに入ったのが見えた。エイデンが急角度で叩いたボールはサイドラインに落ちた。

副審がポールの脇に立っていた。「ナイスカット」

「どうも」

レックスの叫び声が聞こえた。エイデンが振り向くと、彼女は手を叩きながら、彼に笑いかけていた。

彼に笑いかけていたのだ。

エネルギーが溢れてきて、足がピクピク動いた。天井より高く跳べそうだ。いいゾーン、いい調子、エイデンは燃えていた。

次のサーブ——相手チームはボールをそらし、それを戻さなくてはならなかった。キャロルがトス、ボールは高く弧を描いた——

エイデンは好機を捉えた——ブロッカーはラインショットをオープンにしている。ボールを叩いた。

(バーン!)相手チームの女子が地面に倒れた。

心臓が止まった。不安が胸の中で渦を巻いている。息が詰まり、荒い息を吸い込んだ。(自分は何をしてしまったのか?)

ネットの下をくぐって、彼女の方に走った。「ごめん」

彼女はぼんやりと天井を見ていたが、ひどい怪我のようには見えなかった。

ただ、彼女の鼻の上と左目の上に、「タチカラ」(ボールのブランド名)の字がくっきり描かれていた。

***

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ひとり寿司第15章パート3




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ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。

***


レックスはコンピュータを起動させた。IT部門の人が、すでにユーザをリセットしてくれたようだ。ログインのスクリーンには「ASakai」と出てきた。パスワードは? 「ASakai」とタイプしてみた。

大当たり。

そうそう。いい会社かどうかは、そこのIT部門を見れば分かる。

すでにメールが来ていた。ウェンディ・トラン——人事部の若い娘の名前だ!——は、人事部で二時にオリエンテーションの予定を入れていた。ということは、今日の電話を返す仕事は午前中に終わらせなくてはならない。

レックスは一枚目のメモを取った。アリゾナ州立。マーク・バーンズ。

深呼吸。ラッセルは何と言ってたっけ? 彼らは、ジュディを好意的に受け入れていなかった。しかし、ジュディはどんなことをしたのか? 何と言ったのか? レックスが同じようなことをして、このマークという男性を遠ざけてしまったら、どうすればいいのか? 初日に失敗するかもしれない。ボロ負けだ。

もう一度、深呼吸。ちょっと考えてみよう。ラッセルはジュディについて、スポーツをよく知らなかった、とほのめかしていた。もちろんレックスだって、アメリカ中の大学のありとあらゆるスポーツのプログラムを知っているわけではない。この前のトーナメントで「アリゾナ大学」が勝利した時に、「アリゾナ州立大学」の素晴らしいゴルフチームを褒めたたえたら、どうなっただろう? SPZの評判は損なわれ、会社は倒産するかもしれない。

もう一度、深呼吸。ナイキのスローガンのように、Just do it(やるしかない)。(自己紹介をするだけよ。もし失敗してクビになったとしても、先週の金曜日より悪い状態になることはないんだから)

番号を押した。

「アリゾナ州立同窓会、マークです」

「こんにちは、マークさん。SPZのレックス・坂井といいます」

「誰だって?」

「レックス・坂井です。新任の同窓会リエゾンです」

「ジュディを辞めさせた、ってこと?」

「いいえ、妊娠するために辞めました」おっと、ちょっと違うな。「つまり、一身上の都合で退職されました」

マークは、「厄介払いか」というように聞こえることをつぶやいた。

レックスは咳払いした。「今日お電話したのは——」

「ジュディに残した伝言、聞いてくれた? うちが主催する新しいPAC10のバレーボール・トーナメントのウェブ広告のことなんだけど」

「すごい! バレーボールのトーナメントを主催されるんですか?」金切り声より少し低い声が出てしまった。「と言うか、楽しみですね」運がいい——大学バレーボールの関係者と付き合えるなんて。

「今年はアリゾナ、ワシントン、バークレーを招待したんだ」

「アリゾナ州立とワシントンの試合はすごくいいと思いますよ。新しいコーチが強いチーム作りをしてますから」

「そうそう、だけど赤シャツ選手だった一年生を入れたばかりなんだ。一九八センチのアウトサイドヒッター」

「名前は?」

「ロレイン・リー」

「中国系ですか?」

「ハーフだ。母親がスイス人」

「その選手を見るのを楽しみにしています」

「そうだね」一瞬の沈黙は、気まずいというより思慮深い沈黙に思えた。「君、野球は分かる?」

レックスは頭を拷問にかけた。アリゾナ州立の野球の試合を少し見たことがあったのを思い出した。「今年はどうですか?」

「不安定だ」

「キャプテンが卒業しましたからね。去年、彼は素晴らしかったです」

「そうなんだ。彼はエルマーズグルーみたいにチームを一つにしてくれた。新しいキャプテンはデイブ・ギャレットだ」

「ああ、覚えてます。彼も悪くないですね。二、三ヶ月もすれば、慣れてくると思いますよ」

「僕もそう思うよ。さてと、電話をくれてありがとう、レックス。フェニックスに来ることがあったら、連絡するといい。その週末にある試合のチケットを取ってあげるから。フットボールでもいいよ」

(すごい!)「マークさん、ありがとうございます。それじゃあ、バレーボール・トーナメントの広告のことで必要な情報をメールしてもらえますか? すぐに取りかかりますから」一体何をすればいいのか見当もつかなかったが、向こうのキュービクルで嫉妬しているバカどもと対戦できそうなほどいい気分だった。「アドレスはA-S-A-K-A-I @ SPZ.comです」

「ありがとう、レックス」(カチャッ)

「やった!」レックスは勝利の拳でガッツポーズを取った。

(ピン)あ、メールが来た。サイト全体のニュースだった。「SPZスポンサーシップ・プログラム」えっ? クリックしてみた。

突然、開いた戸口にふらりと頭が見えた。グレイがのぞき込んでいる。だがその目は、ソフトボールのように大きくなり、ソフトボールの色をしていた。「すげっ」

「何が?」

「君、スポーツが分かってるな」

「当たり前でしょ。だからラッセルに採用されたのよ」視線をメールに戻した。(秋の四半期から、SPZは——を提供)

「いや違う、本当にスポーツのことが分かってる、っていう意味」

レックスは、コンピュータの画面から視線を引っ張り戻した。「何よ——Y染色体がなきゃスポーツは理解できない、って思ってるの? 考え直すべきね、あなた」メッセージに戻った。(SPZは、三つの地元の青少年クラブチームを全面支援——)

「いや、僕はただ——」

「このメールが読みたいんだけど!?」

グレイは煙のように消えた。最高、怒りっぽくて感情的という評判を築いてしまったかもしれない。

メールニュースに戻った。これはもしかしたら完璧かもしれない。SPZがレックスの女子チームのスポンサーになってくれたら、九月から支援が始まる。

プレイオフの後。

祖母は、マリコの結婚式がある六月まで資金を出してくれるはずだ。何とか祖母をだまして、プレイオフが終わるまでお金を出してもらえたら、八月以降、ボーイフレンドをキープしておく必要はない。あとはSPZからお金が入ってくる。

これよりいいことがあるだろうか? 自分の新しい仕事に感動した。新たなスポンサーの可能性。それに、九割が男性社員という職場——この中に一人ぐらいは、クリスチャンで、彼女の仕事を欲しがらず、「エペソ」のリスト(それほど長いリストではないのだから)に合う男性がいるはずだ。

レックスは決心を固めた。八月まで付き合う男性を見つければよいだけ。祖母にあっと言わせて、夏の終わりまでお金を出してもらえたら申し分ない。テストステロンを帯びたスポーツ狂の大集団を利用してなくては(さっき怯えて逃げていったやつなんて、ちょうどいいんじゃないだろうか)。

そうだ、このスポンサープログラムの申込書を記入しなくてはならない。デスクの上を探した。

ジュディが、ペンを全て持ち帰ってしまっていた。

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