Skip to main content

ひとり寿司第29章パート1




「ひとり寿司」をブログに連載します!


ひとり寿司



寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。

***


29



それは、本当に良い考えだったのだろうか?

違う、どうしてだろう?

しかし、もしかしたら何とかなるかもしれない。彼女は違った。聞いてみることに、何の害があるだろう?

彼女をデートに誘うつもりなら、急がなくては。残っているのはレッグプレスだけ。煮え切らない時間が長すぎた。マシーンに座っている彼女は、何を見るというわけでもなく、大きな窓から外を見ていた。チャンスは今だ。「それでレックス——」

「どんなところで女の子に会うの?」レックスは振り向いて、エイデンを見た。

彼は瞬きした。「えっ?」

「どういうところで可愛い女の子を引っかけるのか、っていう意味よ」

彼はポカンとした顔をした。

眉毛を上げて彼をチラッと見た。「探し回る? くまなく調べまくる? 何て言ったらいいのか分からないけど」

「笑ったらいいのか、ウエイトを増やしたらいいのか、決めかねるなあ」

「やめて、ウエイトは増やさないで。真面目に教えて欲しいの」

「何で?」

「だって……」彼の目を見るのをためらった。

エイデンは、彼女が何か嘘をつこうとしているのではないかと疑った。ウエイトのキーに手を伸ばした。

「やめて!」手を伸ばして彼を制した。「いい男性を見つけないといけないの」

「君のおばあさんが、何人も連れて来てるんじゃないの?」

「違う、いい人じゃないとダメなの。バークレーのチケットが欲しくない人」

「それだけ?」

「そして、クリスチャン」

いつものように穏やかで無表情の顔を保つのではなく、目をぐるっと回してしまった自分に驚いた。「また、それ?」

「大事なの。宗教の違いのために離婚する人が何人いるか知ってる?」

「知らない、君は?」

「知らないけど、たくさんいると思うわ」

エイデンは腕を組み、彼女を見下ろした。「運動が足りないようだ」ウエイトのピンをつかみ、一つ下に動かした。

「ヘーイ!」

「そんなバカな質問をするぐらいだったら、もっと汗をかいた方がいい」

「祖母のせいよ。素敵なクリスチャンのデート相手を見つけないと、私の中学生女子バレーボールチームにお金を出してくれない、って言うの。その上、結婚もしないといけないって」

「そんなバカな話は聞いたことないね」

「本当よ。祖母は変わり者なの。すでに山ほど孫も曽孫もいるのに。支配欲が強すぎるのよ」

「どっちもどっちだ」彼はつぶやいた。

「ええっ?」

「別に」

「あなたには分からない。絶望的なの。それに、その人は信頼できる人じゃなきゃいけない……分かるでしょ。この繊細な問題」頬が赤くなったが、運動したためではない。

ふと彼は、これが彼女にとっていかに難しいことなのかに気がついた。クリスチャンの男なら安全なのだろう——車の後部席でフレンチキスも、濃厚なペッティングもしないだろうから。

しかし、彼女をぐらつかせたいと思う部分もあった。彼女はすでに、彼に心地よさを感じていた。何故、つまらない偽善的なクリスチャンの男じゃないとダメなんだろうか?

「ハーイ、レックス、エイデン」メアリーが女性用ロッカールームに行こうとして、彼らの横を通り過ぎた。

びっくりするほど魅力的なレックスの笑顔。「こんにちは、メアリーさん。肩の調子はどうですか? 先週からよくなりました?」

「そうね、今週末はよく冷やしたのよ。ハンサムな理学療法士さんに言われた通りにね」メアリーはウインクして、エイデンをつついた。そして、ロッカールームに消えていった。

レックスはセットを終わり、息を切らして座っていた。「チャーチ・ホッピングでもしてみようかな。それか、クリスチャン限定で、ノンアルコールのバーってあるかしら?」

エイデンは鼻先で笑った。「神学校の外で野宿でもしたら? 『デートしてくれたら、あなたのために働きます』ってサインを出すんだよ。それか、もっといいのは、『まだ救われていません。デートしてください』だね」

彼女ににらまれて、体毛が燃えるかと思った。「は、は」

最後のセットが終わり、アイスと電気刺激のために、二人は患者エリアへ戻った。「あなた、ラッキーね。ドクターが明日から運転してもいいって」

「明日?」彼女が先にスロープを降りて歩いた。

「三週間って言われてたけど、明日がその三週間後なの」

「怖いな。なるべく道に出ないようにしよう」

「あなたって、ほんと賢いわね。今日、送ってくれる時、車に何か汚いもの、くっつけるわよ——」レックスは急に立ち止まった。エイデンが後ろから彼女にぶつかった。彼女が前に傾いたので、彼は、彼女が倒れないようにウエストをつかんだ。

レックスは気づきもしなかった。ジムでよく見るアイクが、彼女の注意をひいた。突き刺されて血だらけの手の上に「正式な招待状」と殴り書きされた、クリスチャンTシャツを着ていた。

どちらかと言えば、レックスは内気ではなかった。「ハーイ、アイク。いいシャツね」

「サンキュー」アイクは女の子を惹きつける満面の笑顔を見せた。まだレックスのウエストに置かれたエイデンの手は、固くなった。

彼女はエイデンから離れた。「じゃあ……あなたってクリスチャン?」

(マジかよ)エイデンは腕を組んだ。

「そうだよ。サニーベールのバレーバイブル教会に行ってる」アイクは一歩前に出て、その魅力を見せつけた。

「それはパーフェクトだわ」

「は?」

「いえ、素敵だわ。私は、キャンベルのサンタクララ・アジア教会に行ってるの」

「知らなかった、君がクリスチャンだって」アイクは「ちょっと気がある」から「かなり興味をそそられる」にギアチェンジした。

「実は、ずっとバレーバイブル教会へ行ってみたかったのよね」まさか、アイクにまつ毛をパタパタ揺らしてる? (冗談だろ)

アイクは、そのパタパタ動くまつ毛を肯定的に受け取った。「今週末に来てみれば? 僕や独身者グループの子たちと座ればいいよ」

「そうできれば嬉しいわ」レックスは、ビーチバレーより楽しそうにしている。

彼らが時間と道順のことを話し合っている間、エイデンはあごを堅く引き締めた。レックスは男というものを知ってる。本当に、彼の行為に騙されるのだろか? エイデンは、アイクとその友人たちが、運動した後ジムのロッカールームで話しているのを聞いたことがある。あいつらがどんな奴らなのか、女性のことをどのように考えているのかを知っていた。

(彼女は大人の女性だ。自分の面倒は自分で見れる)

しかし、レックスはやけくそになっていた。何かを達成するためだったら、何をするのもいとわないのではないだろうか。

「ありがとう」レックスは、彼にまぶしい笑顔を見せた。

「じゃあ日曜日に」アイクは、ウエイトマシーンのエリアへ行ってしまった。

「バレーバイブル教会?」どうしても皮肉っぽい口調になってしまった。

「やるしかないわ」レックスは、可愛い表情から冷たい表情に変わった。そして、スロープを降りていった。

エイデンの友達のスペンサーは、バレーバイブル教会へ行っていた。彼に頼んで、今週末、レックスを見張ってもらおう。

***

電子書籍
アメリカKindle
日本Kindle
Apple Books
Kobo/Rakuten
Google Play
印刷本
アメリカAmazon
日本Amazon

Comments

Popular Posts

I’m done

Captain’s Log, Stardate 05.17.2006 Blog book giveaway: My Thursday book giveaway is THE PREACHER’S DAUGHER by Lyn Cote My Monday book giveaway is BLIND DATES CAN BE MURDER by Mindy Starns Clark . You can still enter both giveaways. Just post a comment on each of those blog posts. On Thursday, I'll draw the winner for THE PREACHER’S DAUGHTER and post the title for another book I'm giving away. Stay tuned. I’m done. At the beginning of the year, I made a goal of three books this year. That’s four months per book. I started this manuscript January 15th. I finished in the wee hours of May 17th, so it took me about four months, a day and a few hours. Yay me. I’m going to bed now. Yes, this is the espresso maker on the right, and a professional coffee grinder on the left. By the espresso maker, I mean the one I promised to my long-suffering husband if I got a book contract, as a reward for letting me quit my biotech job and write full-time.

I GOT A CONTRACT!

Captain’s Log, Stardate 03.29.2006 I had a wonderfully funny blog post planned for today, but I got sidetracked by some news yesterday! Zondervan has offered me a three-book contract on my Asian chick-lit series ! I’m still stunned by everything that’s happened. The series is actually a 4-book projected Asian chick-lit series about four cousins who fall under the infamous family title "Oldest Single Female Cousin," and their ruthless, wealthy grandma applies pressure on each of them to improve their lack of love interests. I think the first book is tentatively scheduled to be released in August 2007. The blurb on the series is on my website here . Brandilyn Collins posted to the ACFW loop about my writing journey, and Tamara Cooper asked that I share it. And since you all know how much I like to talk , here it is. My writing journey: Like most writers, I have wanted to write since I was very young. (In high school, I wrote a fantasy novel that will never see the light of day ...

ICRS Tuesday

Captain's Log, Stardate 07.11.2007 I started the day with a great meeting with Al Hsu , an editor at InterVarsity Press. We discussed Asian Americans—fiction, non-fiction, the church, family. He’s been in publishing for many years and is very wise. We had a great discussion. I also met his wife Ellen, who’s totally nice and is also into card-making! I wandered the floor and happened to meet Robin Jones Gunn. She asked if I’d eaten yet, and since I hadn’t, said to join her for lunch. On the way to lunch, we met Mark Mynheir, and he gave me a copy of his book, got The Void . Isn’t that cool? Robin has so much wisdom. I loved having lunch with her. She gave me such good advice, both professionally and spiritually. I hope I’ll get a chance to have lunch or dinner with her at the ACFW conference in September. I met up with agent Steve Laube, and walked with him to his next meeting, but on the way we were hailed by Cec Murphy and agent Jeff Dunn. Jeff had been the first editor to request...

Window shopping

Captain’s Log, Stardate 03.14.2005 Knee update: I went to the doctor today for a checkup, and saw his assistant. I’ve been concerned because there’s still inflammation in my knee joint, and it’s been almost 4 months since the surgery. She said she’d talk to the doctor about it tomorrow and call me. Sometimes he suggests laying off the PT to see if that causes the inflammation to go away, but I don’t know if that will work because lately I’ve been pretty active outside of PT. At PT today, the therapist did ultrasound and some sort of electrical current on the joint. Hopefully that will make the inflammation start to go down. I’ll know by tomorrow, probably. Writing: Mt. Hermon conference starts this Friday! On Thursday night, I’ll be at the Santana Row Borders bookstore to help out (and hopefully learn a bit, too) at a booksigning for several of the ACFW authors who are attending Mt. Hermon . That should be lots of fun. I had a good brainstorming time at ...

Free Christian Romantic Suspense Novels by Camy Tang / Camille Elliot

Curious about what my writing is like? Here’s a list of all my free books and the free short stories, novellas, and novels that you can read here on my blog. I’ll update this post as I add more free reads. Christian Regency Romantic Suspense (as Camille Elliot) The Spinster’s Christmas (Lady Wynwood’s Spies series, Prequel novel) (Posted on my blog as a serial novel, completed) Spinster Miranda Belmoore and naval Captain Gerard Foremont, old childhood friends, meet again for a large Christmas party at Wintrell Hall. Miranda is making plans to escape a life of drudgery as a poor relation in her cousin’s household, while Gerard battles bitterness at the fact that his career was cut short by the injury to his knee. However, an enemy has infiltrated the family party, bent on revenge and determined that Twelfth Night will end in someone’s death … Lissa and the Spy (Lady Wynwood’s Spies series, Prequel novella) Click here to get this ebook FREE when you subscribe to my newsletter In...