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「ひとり寿司」をブログに連載します!
ひとり寿司
寿司シリーズの第一作
キャミー・タング
西島美幸 訳
スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。
ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。
そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。
エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。
レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——
過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。
28
「ねえビーナス、お願い」装具をもっとしっかり脚に巻きつけようともがきながら、レックスは肩で携帯を持とうとした。
「ごめん、すごく仕事が忙しいの。トリッシュに行ってもらうように電話したから」
「トリッシュ? いつから彼女が私のお気に入りになったの?」立ち上がり、段ボール箱の間を通って、トイレにたどり着いた。
「ジェン、今週末は出かけてるの——ほんと、都合がいいわよね。だから、トリッシュかマリコのどっちかなのよ」
(うわっ)「分かった。何時に来てくれるの?」
「あの子が家を出るときにつかまえたから、もうすぐ来るはずよ」背景でボソボソ言う声が聞こえ、ビーナスの注意がそれた。
「……違うわ、アクション・アイテムを書くの……だから違う——」レックス、行かなきゃ、じゃあね。(カチャッ)
ドアベルが鳴った。
トリッシュは痩せたようだ。ぼんやりした目の下には黒いくまができ、口の周りには、苛立っているようにシワが寄っている。「行きましょ」
車に乗るとすぐ、トリッシュは沈黙を破った。「話したくないのよ、分かる? 私たちさ、叔父さんのバースデーパーティに着くまで一緒にいなきゃならないの。だから、今は考えないようにしましょ」
「いいわよ」レックスの歯はかたく食いしばっていたが、腕を組むのはやめた。
「それで……さあ……PTはうまく行ってる?」
(誘導尋問か)マッサージをしてもらっていること、恐怖を克服したこと、その後の勝ち誇ったような気持ちを……アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップの王者のように……数週間前にはトリッシュに話していたことだろう。「うまく行ってるわ」我慢しきれなくて、もう少し掘り下げた。「エイデンが私のセラピストだって知ってた?」
トリッシュの目は風船のように膨らんだ。「エイデンがあなたのPTなの? 彼、元気にしてる?」
「元気よ。バレーボール友達が、みんな、彼を勧めたもんだから」
トリッシュは鼻をすすった。「あなたがクリスチャンだってことで、噛みつかれてない?」
「あなたは噛みつかれたの?」
「ずっとそうだったわ。だから、とうとう言っちゃったの。クリスチャンじゃないからもう付き合えないって。くどくど言われたくなかったし」
くどくど言うのはエイデンらしくない。それに、最近のトリッシュを見ていると、彼女のエイデンに対する見解を信じるムードではなかった。
好きといえば、レックスは彼が好きだった。リストに合う人ではなかったのだが、そのリストに付け加えることを考えてもいなかった一つの条件:(触られたときに、怖いと思わない人)を、彼は満たしていた。
彼と、どうにかなる可能性はあるのだろうか。どうにかならないのであれば、少なくとも祖母の前でボーイフレンドのふりをしてくれる気はあるだろうか? だけど、それだとやっぱりウソをつくことになる。
叔父の家に着くと、すでに子供の金切り声が響き渡り、男性がそろってうめき声を上げている——ジャイアンツの試合かな? 多分。
(食べて帰る。またこれか)
早く着いた人たちの車が既に家の前のスペースを占領していたので、トリッシュは、数ブロック離れたところに停めなくてはならず、不平を漏らした。「歩きたくないわ。こんな靴だし」
彼女はものすごい速さで歩き出し、じれったそうにレックスの方を振り向いた。「今年中には着く?」
レックスは彼女の後ろでグラついた。医者は松葉杖を使わなくてもよいと言ってくれたが、持ってくればよかった。トリッシュの頭をバシッと叩けるように。
ドアに入るなり、ビールくさい叔父が彼女に手を伸ばした。「ヘーイ、レクシー、トリッシュ」
レックスはアイロン台より硬くなり、彼を押し返した。この無邪気な叔父は、ミラー・ジェニュイン・ドラフトを飲むと、過度に愛情深くなる。
「食べ物は?」トリッシュは狭い通路を通ってキッチンに向かった。居間からまた歓声が聞こえた——もしかしたらA’sの試合をみているのかな。
「捕まえた! 捕まえた!」
いとこの子供二人が廊下の角に突進してきたのに気がついたのは、二分の一秒前。トリッシュのスカートの周りをシュッと過ぎ、レックスの装具に真っ直ぐ激突してきた。
(ボン!)少女がメタルの枠に跳ね飛ばされ、木の床に跳ね返った。その衝撃が、レックスの膝関節に鋭く振動した。
「ああっ!」
「わああっ!」
子供の声の方が大きかった
このガキ——いや、子供の母親が廊下を走ってきた。「レックス、何したの?」
「私が何かしたって?」
「防弾服を着てるのは、あなたの方でしょ」いとこは、攻城兵器のような娘を抱き上げた。「かわいそうに、ロボ・レックスにいじめられたの?」
「わああっ!」
その少女を追いかけていた少年は、スチールで覆われたレックスの脚を不思議そうに見ていた。
レックスはその少年を驚かせるような動きをした。
彼は後ろに下がった。
いとこは息を呑んだ。「何て大きいいじめっ子なの」
レックスは目をぐるっと回し、見えなくなっていくトリッシュのスカートを、びっこをひきながら追いかけた。
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