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ひとり寿司第26章パート2




「ひとり寿司」をブログに連載します!


ひとり寿司



寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。

***


**********


レックスは水曜日のPTに行った。エイデンと腸脛靱帯の拷問に耐える心構えをして。脚のマッサージもきちんとした。

しかし、エイデンはチェンジアップを投げてきた。

仰向けに横になっている間、彼は自分の肩の上まで彼女の足首を持ち上げ、膝を押して一八〇度真っ直ぐにした。

「イタ、タ、タ、タッ」

膝頭が裂けるような痛みのために、レックスの上半身は治療台から離れた。

「また他の患者を怖がらせてるよ」エイデンは一瞬、圧迫を緩め、また押した。

「うるさーい!」レックスは楽しいことに集中しようとした。エイデンのお腹に、侍の刀を突き刺すこととか。

彼はやっと彼女の脚を下ろした。レックスは治療台の上から床にだらりと降りた。

エイデンが上から彼女を見ている。「ほら、立って。まだジムでのエクササイズが残ってるよ」

起き上がって、松葉杖をつかんだが、それをエイデンの素足の膝頭に向けて振り回す前に、別のセラピストが彼女の前を歩いた。

助かったわね、運のいい奴。

レックスは体を持ち上げた。エイデンが松葉杖を指さした。「それなしで歩いてごらん」

「え?」

「ジムエリアまでたった数メートルだよ。転びそうになったら僕が捕まえるから。大丈夫だと思うけどね」

「あなたは私のドクターじゃないわよ」

「違う」腰に拳を置き、スーパーマンのポーズを取った。「僕は君のセラピスト」

やれやれ。松葉杖を手放し、試しに一歩、歩いてみた。

わあっ、できたじゃない。思っていたほど不安定だと思わなかった。エイデンが待っている、開いた戸口の方へ向かった。

彼は彼女の足を調べた。「かかとから先に下ろして——」

彼のところにたどり着く一歩手前で、足が母指球の上に不自然に降りてしまい、前のめりになった。

(バン!)右目をドアの枠にぶつけてしまった。

そのまま床に倒れてしまわないように、エイデンはレックスのウエストをつかんだ。

すると、月曜日に見かけたイケメンが、ドアから入ってくるところだった。びっくりするほど最悪のタイミング——目の前に星がチラつき、動悸が始まった。今にも頬骨が頭蓋骨から飛び出そうだ。

「大丈夫?」マイケル・ヴァルタンもどきは、レックスの目をのぞきながら、少し顔をゆがめた。

「順調です」まだ、頭が二つあるように見える。

エイデンは、彼女の目を調べようとして、手を動かした。「大丈夫だよ。冷やそう」

「ああ、そうね」向きを変えて、患者エリアに戻り始めた。

「エクササイズの後だよ。どこに行くつもり?」

**********


よし、今度こそ大丈夫だ。金曜日、レックスはPTに向かった——いや、ヨタヨタと歩いた。腸脛靱帯のマッサージもした。脚を伸ばす訓練も。

しかし、エイデンはサディスティックな性格だった。

治療台の上で強化訓練をした後、エイデンは手術の痕、医者による切開部分をチラッと見た。「きれいになってきたね」

「うん、水膨れもなくなったし」

彼は傷痕にさわった。「表面の下に瘢痕組織が、たくさんあるみたいだ」

(それは大変)

エイデンは、何か白くてヌルヌルしたものが入ったプラスチックの瓶を取り出した。そして、それを少し指に取り、傷痕に塗り込み始めた。

「いっ、いっ、いっ!」レックスは叫び声を上げるたびに、手で治療台をたたいた。「傷痕ぐらいどうでもいい! ほっといて!」

「伸びが悪くなるんだよ」エイデンは、(何て幼いんだ)という目で見た。

涙が溢れ出した。「ほら、あんたのせいで泣けてきた」

「手術のせいでホルモンバランスが崩れてるだけだよ」

「全てのことに答えがあると思ってる?」

「君の不満には全部、答えられる」

レックスは後ろに寄りかかって泣き言を言った。

「女々しいね」

「そんなことない」

「メアリーっていう人がいてさ——僕の母と同じぐらいの歳かな。股関節置換術を受けたんだけど、君の半分も文句を言わなかったよ」

「きっとその人には優しくしたんでしょ」

「いや、もっと厳しくした」

「不可能だわ」

「それでも僕のことを気に入ってくれてた。ジムの会員になって、週三回は真面目にリハビリに来てるよ」

「あなたって人をひきつける性格なのね」彼は塗り終わり、レックスは顔をしかめた。

「エクササイズの時間だ」

***

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