Skip to main content

ひとり寿司第23章パート3




「ひとり寿司」をブログに連載します!


ひとり寿司



寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。

***


**********


レックスは目を開けた。わあ、違う部屋で寝ている。八まで数えたときは、誓ってはっきりと目を開けていた。今はぼんやりしていて、足を動かすことができない。

どうしよう! 体が麻痺してる!

吐いた後だったら、パニックになっていただろう。

「気分はどうですか?」元気がよすぎる笑顔の看護師がベッドに近づき、点滴をさわった。そして、レックスのベッドを座位に変え始めた。

「吐きそうです」口の中で雑草が生えてきたようなにおいがする。

「もうちょっとですね」看護師は点滴を引っ張り、何かを注入した。

一〇分後、口の中が急に乾き始めた。何かしゃべろうとしたが、舌が動かない。「お……み……」

「ジュースですよ」看護師は彼女の口にストローを入れた。

「んん……」

「全部飲んでくださいね」

レックスは頭を振った。部屋が回っている。

「起きる時間ですよ」看護師は、松葉杖を床に弾ませるように渡した。(こんなに急がせるなんて、どこかで火事だろうか?)足が、骨の奥深くまで激しく痛み始めた。

「椅子が要りますね」

「え——?」上半身を起こすことすら、ままならないのに。

「麻酔がまだ残ってますが、動くとだんだん取れてきます。そうしないと、一日中、ここで寝ることになりますよ」看護師はクスクス笑った。「ここはホテルじゃないですからね」

部屋が斜めに見え、松葉杖でよろめいた。看護師の燃えるようなエネルギーと言ったら! 数メートルの距離だが、キャスターのついたスタンドにひきずられる点滴のバッグと一緒に、彼女をリクライニングチェアまで運んだのだ。変わったイグルーのクーラーが太い管で取り付けられている足は、凍るほど冷たい。看護師は、それも一緒にリクライニングチェアに動かした。

レックスはそこに倒れ込んだが、ただ、もう少し眠りたかった。

「もうすぐ家に戻れますよ」

(家? 意味のある文章もしゃべれないのに。ビーナスはどこ? 超楽観主義のステロイド依存看護師、一体誰なの? 一切れの羊肉より大きく、凍ってガチガチの足で、どうやって車まで歩けるの?)

「ヘーイ、レックス」ビーナスが現れた。

リトル・ミス・サンシャインは、レース・カーのように車椅子を操作し、レックスの後ろでウロウロしている。そして、イグルーのクーラーに取り付けられた管を外した。「帰る時間ですよ」

レックスはゆっくりと車椅子へと動いた。座った瞬間、ミス・アーンハルトは通路を疾走し、脇のドアの外に出た。車椅子をきしらせてスロープを降り、ビーナスの車の方へ曲がろうとして縁石をかすった。

強くぶつけたわけではなかったが、レックスは、何かが横から骨にぶつかったような不快感を覚えた。「痛っ!」膝をつかんだが、何重にも巻かれた包帯の厚みを感じただけだった。

このナスカー看護師は、ビーナスの車の隣でキキッ、と止まった。レックスは息を吸った。

「しっかり。動けば、ぼんやりした感覚も飛んでいきますよ」看護師は車椅子を揺らした。

この女は本気なのか? 立ち上がろうとすると、暗い空が回転木馬のように回転し、ふらついた。助手席のドアをつかんだ。

ちょっと痛いが、振り返って座席に座ろうとした。ビーナスの小さい車で足を真っ直ぐにしようと思ったら、もっと角度をつけなくてはいけない。

「背もたれを倒して」

「もう全部倒れてるわ」

足はバケツ型の座席の端に垂れ下がっているが、かかとが床につかず、膝がブラブラ揺れている。看護師は車椅子を押し、大急ぎで行ってしまった。

手術センターから家までの長いドライブのことは、あまり覚えていない。覚えているのは、その小さいスポーツカーが道路の凸凹にぶつかるたびに、痛みが足を走ったことぐらいだ。

「もっと滑らかに運転できない?」

「お赦しください、お妃様」

ビーナスはやっと、コンドミニアムのカーポートにゆっくり入った。車が隣にあるので、レックスはドアを全部開けることができない。斜めになって出ようとしたら、ドアに足元をぶつけてしまった。「ああーっ」

ビーナスが松葉杖を持ってきた。レックスは後ろ向きにカーポートから出たが、それが失敗であることに気がついた。

地面はカーポートから下り坂になっていて、その傾斜の変化に対する心構えができていなかった。彼女は後ろ向きに倒れ始めた。

「ビーナス!」

(ぺチャッ)レックスは後ろに倒れた。衝撃が足に伝わってきた。「ああっ、膝が、膝が」

ビーナスが彼女の脇でかがんだ。「少なくともお尻でよかったわ。クッションがあるから」

「自分はどうなのよ、シャボン玉みたいなお尻のくせに。ああ、尾骨がズキズキする」

「痛いから悪態をつきたくなるのよ」

「あなただって」

ビーナスは彼女の腰に腕を回した。「いい? 一、二、三、よいしょっ、と」

少しお尻が地面から離れたと思ったら、また尻もちをついてしまった。「ちょっと!」

「ごめん」ビーナスはレックスを見回した。「無理、持ち上げられないわ」

「松葉杖ちょうだい」

ビーナスの腕に支えられていたのに、ワサマタユのトライアウトのために上半身のウエイトトレーニングをやってきたのに、レックスには立ち上がるのがやっとの思いだった。

 長い夜になりそうだ。

***

電子書籍
アメリカKindle
日本Kindle
Apple Books
Kobo/Rakuten
Google Play
印刷本
アメリカAmazon
日本Amazon

キャミーのニュースレター

* が必要です。

私のEメールニュースレターにサインアップしてください。私からのウェルカムメールが数通届き、その後は月に1通程度のメールが届くことになります。申し訳ありませんが、時々ニュースレターが日本語になりません。私からのメールのフッターにある配信停止のリンクをクリックするか、camy@camytang.com。いつでも変更することができます。

“配信を確認してください。” のメールを送ります。 メッセージの中にある確認リンクをクリックして、あなた本人であるかどうかを確かめて下さい。大変申し訳ありませんが、“配信の確認をしてください。” のメールは英語になります。

個人情報保護方針: 私はあなたの個人情報を尊重しています。Eメールアドレスを含めた個人情報は、第三者に開示・提供しません。

当社では、マーケティングプラットフォームとしてMailchimpを使用しています。以下をクリックして購読することで、お客様の情報が処理のためにMailchimpに転送されることをご了承ください。Mailchimpのプライバシーポリシーについてはこちらをご覧ください。

Comments

Popular Posts

Merry Christmas! Enjoy The Spinster's Christmas

As a Merry Christmas gift to all my blog readers, I’m going to be posting my Christian Regency romantic suspense, The Spinster’s Christmas , for free on my blog! I’ll be posting the book in 1000-1500 word segments every Tuesday and Friday. (When I do the calculations, it’ll finish around the end of May.) Why am I posting a Christmas story when it won’t be Christmas in a week? Because I can! :) The Spinster’s Christmas is the prequel volume to my Lady Wynwood’s Spies series . Right now I’m editing volume 1 of Lady Wynwood’s Spies, and it’s on track to release in 2020. (If you’re on my Camille Elliot newsletter , you’ll be sure to hear when it’s available for preorder.) I anticipate that the Lady Wynwood’s Spies series to be about ten volumes. I think the series story will be a lot of fun to tell, and I’m looking forward to writing up a storm! Below, I’ll be listing the links to the parts of The Spinster’s Christmas as I post them. (I created the html links by hand so please l

Tabi socks, part deux

Captain's Log, Stardate 07.25.2008 (If you're on Ravelry, friend me! I'm camytang.) I made tabi socks again! (At the bottom of the pattern is the calculation for the toe split if you're not using the same weight yarn that I did for this pattern (fingering). I also give an example from when I used worsted weight yarn with this pattern.) I used Opal yarn, Petticoat colorway. It’s a finer yarn than my last pair of tabi socks, so I altered the pattern a bit. Okay, so here’s my first foray into giving a knitting pattern. Camy’s top-down Tabi Socks I’m assuming you already know the basics of knitting socks. If you’re a beginner, here are some great tutorials: Socks 101 How to Knit Socks The Sock Knitter’s Companion A video of turning the heel Sock Knitting Tips Yarn: I have used both fingering weight and worsted weight yarn with this pattern. You just change the number of cast on stitches according to your gauge and the circumference of your ankle. Th

Lady Wynwood's Spies, volume 4: Betrayer is here!

The latest volume in my Christian Regency epic serial novel is released! Here’s the back cover description of Lady Wynwood’s Spies, volume 4: Betrayer : A Christian Historical Adventure set in Regency England with romance and a supernatural twist Part four in an epic-length serial novel Beleaguered spies Lady Wynwood’s team of spies are trying to heal from the physical and mental wounds recently dealt to them. However, their investigation into Apothecary Jack’s mysterious group has turned up only a few strange, disjointed clues, and the dangerous Root elixir continues to circulate in the London underbelly. It is only a matter of time before the Root is sold to Napoleon, which would give him overwhelming dominance in the war. Sudden threats Then Laura, Lady Wynwood, is unexpectedly attacked by a man she had trusted. Although Phoebe and her household staff manage to protect her, her life is now in danger and she must go into hiding. Dangerous mysteries Laura uncovers more

How can I pray for you?

Photo credit: lalalime.blogspot.com 日本語訳は下をご覧ください。 I hope you had a good Thanksgiving, taking time to be still and remember God’s grace. My IBS has gotten a little better, but I’m still not entirely in control of my symptoms. There are simply too many things I don’t know if I can eat or not, and when I try things, if they affect my IBS, then I’m out for about a week at a time. My writing has slowed down more than I’d like. Please pray for God to heal my IBS, and for me to learn what God wants me to learn by allowing these struggles. Just as I’m struggling, if you are too, remember that God is with us and has a reason for everything that happens to us. Lord, thank You that You are always with us and have control over everything that happens to us. Help us to surrender to You and do Your will, no matter what is going on in our lives. Amen How can I pray for you today? Please leave me your prayer requests! Prayer requests can sometimes be private things, so to keep your

ひとり寿司第25章パート2

「ひとり寿司」をブログに連載します! ひとり寿司 寿司シリーズの第一作 キャミー・タング 西島美幸 訳 スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。 ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。 そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。 エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。 レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり —— 過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。 *** ビーナスはベンの視界をさえぎった。「ここは大丈夫だから、もう帰っていいわよ」 「でも——」 ビーナスは、また彼の目の前でドアを閉めた。 「何——」 ビーナスはレックスの言葉をさえぎり、ドアの隣の窓から外をのぞいた。「よかったわ、レックス、エイデンが来てくれて。あなたの巻き爪を全部切ってくれるわよ」ビーナスの声が小さい部屋に響き渡った。 どうやって礼儀正しく答えようかと決めかねているように、エイデンの表情は少し硬くなった。多分、(そうなの?)とか(それはおもしろいね)とでも言う

Camy Tang's November newsletter

My Camy Tang (Christian Contemporary Romantic Suspense) newsletter went out this week, but in case you missed it, the link is below. In my newsletter this month, there’s an update on my personal life and publishing schedule, and I also linked to a blog post about what the TV show Supernatural has to do with GONE MISSING, the 6th book in my Sonoma series Click here to read my Camy Tang newsletter for November. I also forgot to post the link for the October newsletter, so you can click here to read it.

No Cold Bums toilet seat cover

Captain's Log, Stardate 08.22.2008 I actually wrote out my pattern! I was getting a lot of hits on my infamous toilet seat cover , and I wanted to make a new one with “improvements,” so I paid attention and wrote things down as I made the new one. This was originally based off the Potty Mouth toilet cover , but I altered it to fit over the seat instead of the lid. Yarn: any worsted weight yarn, about 120 yards (this is a really tight number, I used exactly 118 yards. My suggestion is to make sure you have about 130 yards.) I suggest using acrylic yarn because you’re going to be washing this often. Needle: I used US 8, but you can use whatever needle size is recommended by the yarn you’re using. Gauge: Not that important. Mine was 4 sts/1 inch in garter stitch. 6 buttons (I used some leftover shell buttons I had in my stash) tapestry needle Crochet hook (optional) Cover: Using a provisional cast on, cast on 12 stitches. Work in garter st until liner measures

Grace Livingston Hill romances free to read online

I wanted to update my old post on Grace Livingston Hill romances because now there are tons more options for you to be able to read her books for free online! I’m a huge Grace Livingston Hill fan. Granted, not all her books resonate with me, but there are a few that I absolutely love, like The Enchanted Barn and Crimson Roses . And the best part is that she wrote over 100 books and I haven’t yet read them all! When I have time, I like to dive into a new GLH novel. I like the fact that most of them are romances, and I especially appreciate that they all have strong Christian themes. Occasionally the Christian content is a little heavy-handed for my taste, but it’s so interesting to see what the Christian faith was like in the early part of the 20th century. These books are often Cinderella-type stories or A Little Princess (Frances Hodgson Burnett) type stories, which I love. And the best part is that they’re all set in the early 1900s, so the time period is absolutely fasci

One-Skein Pyrenees Scarf knitting pattern

I got into using antique patterns when I was making the scarf my hero wears in my Regency romance, The Spinster’s Christmas . I wanted to do another pattern which I think was in use in the Regency period, the Pyrenees Knit Scarf on pages 36-38 of The Lady's Assistant for Executing Useful and Fancy Designs in Knitting, Netting, and Crochet Work, volume 1, by Jane Gaugain, published in 1840. She is thought to be the first person to use knitting abbreviations, at least in a published book, although they are not the same abbreviations used today (our modern abbreviations were standardized by Weldon’s Practical Needlework in 1906). Since the book is out of copyright, you can download a free PDF copy of the book at Archive.org. I found this to be a fascinating look at knitting around the time of Jane Austen’s later years. Although the book was published in 1840, many of the patterns were in use and passed down by word of mouth many years before that, so it’s possible these are p

Year of the Dog serial novel, chapter 7

I’m posting a Humorous Christian Romantic Suspense serial novel here on my blog! Year of the Dog is a (second) prequel to my Warubozu Spa Chronicles series. Year of the Dog serial novel by Camy Tang Marisol Mutou, a professional dog trainer, is having a bad year. While renovating her new dog kenneling and training facility, she needs to move in with her disapproving family, who have always made her feel inadequate—according to them, a job requiring her to be covered in dog hair and slobber is an embarrassment to the family. She convinces her ex-boyfriend to take her dog for a few months … but discovers that his brother is the irate security expert whose car she accidentally rear-ended a few weeks earlier. Ashwin Keitou has enough problems. His aunt has just shown up on his doorstep, expecting to move in with him, and he can’t say no because he owes her everything—after his mother walked out on them, Aunt Nell took in Ashwin and his brother and raised them in a loving Chri