I worked on my first Kickstarter and it got approved! It’s for the Special Edition Hardcover of Lady Wynwood’s Spies, volume 1: Archer and the release of Lady Wynwood’s Spies, volume 7: Spinster. I contacted my graphic designer about the Special Edition Hardcover of vol. 1: Archer—it’s going to be SO beautiful! The Kickstarter focuses on the Special Edition Hardcover, but it’ll also include vol. 7: Spinster so that it’ll sort of be like a launch day for vol. 7, too. A third special thing that’ll be in the Kickstarter is Special Edition Paperbacks of all the books in the series. They won’t be available in stores, just in the Kickstarter (and later, from my website, and also in my Patreon book box tiers if I decide to do them). The Kickstarter is not live yet, but you can follow it to be alerted when it has launched. (You may need to create a free Kickstarter account.) Follow Camy’s Kickstarter
「ひとり寿司」をブログに連載します!
ひとり寿司
寿司シリーズの第一作
キャミー・タング
西島美幸 訳
スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。
ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。
そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。
エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。
レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——
過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。
父に白い封筒を渡される前から、レックスの心臓は張り裂けていた——冷たい日本海で真っ二つに分かれる氷河のように、耳をつんざくような鋭い音がする。
(あなたを、ワサマタユ・スポーツクラブの男女混合および女子バレーボールチームに受け入れます……)
その手紙にきちんと折り目をつけて、封筒の中に戻した。そして、膝を上げて横になっているソファの隣に置かれた、コーヒーテーブルに手紙を落とした。
彼女の入部を伝えるために、その日の午前中、ダレンから電話があった。
「ダレンさん……先週、ACLを切っちゃったんです」彼女の声は震えた。爪は電話に食い込み、甘皮が痛い。
「それは確かなの?」
「MRIを撮って、今日ドクターに会って来ました。二週間後に手術の予定です」
「レックス……」電話口で、ダレンの大きなため息が聞こえた。「故障者リストがあるけど、順番待ちリストと同じぐらい長いリストだ」
涙が頬をつたう。あごを引き締めて、舌を噛んだ。
「残念だよ、レックス。故障者リストに入れておく。もしかしたら二、三年後だね」
(カチャッ)
すべての希望の断絶。
封筒を見つめながら、唾を飲み込んだ。怪我のバカ。ACLのバカ。
封筒を取り上げて、きれいに二つに破った。そしてもう一度。さらにもう一度。小さい切れ端が、白い涙のように膝の上に降った。
「もう出来ないわ、レックス」トリッシュの血走った目は、レックスの方に動いたが、その後、居間の窓の外へ流れた。震える手で、スウェットシャツの上の錠剤を取った。
「何がもう出来ないの? トリッシュ。ACLを切ったのは初めてなのよ」トリッシュが家まで来てくれたのは、レックスを職場まで乗せて行ってくれるためだと、レックスは期待していたのだが、トリッシュがこんな状態では、彼女の車には絶対乗りたくない。「会社には病欠だって電話したの? こんなひどい二日酔いは、大学以来見たことない」
「二日酔いじゃないわ」トリッシュの返事は早すぎ、キッパリし過ぎていた。頬をこすっても、青白く腫れた顔がピンクになるだけだった。
「そうじゃなくて、疲れてたから迎えに来てくれなかったんだよね。朝十一時のMRI」
「もう謝ったじゃない」悪いと思っているようには聞こえなかった。
「じゃあさ、この埋め合わせに手術の後二、三日、助けになってよ」
「それなのよ、レックス。もう出来ないの。前の時と同じじゃない」
「前の時って? 足首の捻挫の時?」
「分かってるでしょ……あのレイプの後」
北極の冬が、彼女の心を一瞬にして凍らせた。レックスはその言葉を口にしたことが一度もなかった。トリッシュもそうだった、この時までは。線路の上の汚れた雪のように、醜い音が部屋の中でよどんでいる。「どうして——」
「あの後、すごく鬱になってたよね」
レックスはあの襲撃後の日々を——数週間にもなるかもしれないが——はっきりと覚えていない。足と腕にかけられた重みのような感覚は覚えていた。口は開いていても、あの時のことを話すことができなかった。
トリッシュは話し続けた。「あなたが受けたトラウマみたいなものは分かるわ。だけどね、あなたと一緒にいるだけで、私は感情的に疲れ果てたの」
レックスは、その頃、トリッシュが一緒にいてくれたことを覚えていた——風が吹き荒れる夜、トリッシュだけが、彼女にとっていつも輝く星だった。あの頃、トリッシュの笑顔と、レックスの腕、肩、頭に触れる彼女の手だけは——耐えられた。父と兄は別として、トリッシュだけが彼女に何が起こったのかを知っていた。ビーナスやジェニファーには話していない。ましてや祖母は知る由もない。
レックスは唾を飲み込んだ。「手術の時、あなたが助けになってくれるのを期待してたのに」
トリッシュは頭を振り、その目は壁、天井、そして窓へと流れて行った。「和夫が言うのよ。要求が多くて、いつもくっついてるあなたのために時間を取られ過ぎてるって」
「ええっ?」
「二度はできないわ、レックス」
レックスは息を呑んで、そこに座っていた。なんと言っていいのか、分からない。(ああ、分かったわ。膝とワサマタユを同時に失った今、無能者にはならない、って約束する)
トリッシュは黙ってため息をつき、振り返って玄関まで歩いていった。ドアを出て、それをしっかりと閉めた。
レックスはそのドアを見つめた。もう一度ドアがあくのではないかと期待している自分に気づき、顔をそむけた。
その眼差しは、ベルクロとメタルの黒い装具に固定された、ゴワゴワした足まで降りていった。足の痛みより、それを見るたびに感じる心の痛みの方が格段に大きかった。初めて受ける大きな手術だ。
自分がこうなるなど、思いもしなかった。捻挫や肉離れは何度かあったが、深刻なものは何もなかった。
今回は……魂から命を吸い取られた。空虚ではかない気持ちになった。
空虚ではかない気持ちになったことなど、今まで一度もなかった。いつも強くて健康的だったのに……。
もしかしたら、もう二度と強くて健康的になれないかもしれない。
目を固く閉じると、涙がポロリと落ちた。舌を強く噛んだ。その痛みのために、集中することができ、一〇億の涙の粒が溢れ出るのが抑えられた。
誰が看病してくれるだろうか? 父は金曜日に引っ越してしまい、自分も今週末には出て行かなくてはならない。見つけたコンドミニアムの部屋は階段があるから無理。だから電話をかけて、南サンノゼにあるワンルームコンドミニアムの一階を押さえた。予算に合うコンドミニアムはここだけで、トリッシュに見に行ってもらおうと思っていたが、彼女と連絡が取れないので、実際に見に行ってもいない。確かに最近のレックスは、トリッシュに頼り過ぎていたのかもしれない。レックスは彼女を窒息させていたのだろうか?
本当に、そうだったのだろうか? トリッシュに会うのは週に一回か二回、教会かバイブルスタディだけなのに? しかし、ことあるごとにトリッシュに電話をしていたのは確かだ。もしかしたら、それが彼女を苦しめていたのかもしれない。
レックスのため息は、すすり泣きに変わった。まるで、人を窒息させる濡れた毛布だ。
誰が看病してくれるだろうか? 父親? だめだ——レックスの身の回りのことを手伝うのは、絶対に苦手だ。いつもそういうことからは逃げていて、子供の頃も、レックスの叔母に任せていた。
ジェニファーは? 思いやりがあり、母親らしいことはできるだろうが、彼女は仕事がある。ビーナス? トリッシュと違い、とげのあるビーナスと親しくなったことはなかった。
誰もいない……
電話が鳴った。レックスはソファーとコードレス電話との間の距離を測り、体を引きずって、四回鳴ったときに電話を取った。「ハロー?」
「レックス、ビーナスよ。変に思うかもしれないけど、突然、あなたに電話をかけなきゃいけない気がしたの。もしかしたら神様がそう言ってるのかなと思って」
レックスは泣き出した。
ビーナスはため息をついた。「やっぱり、神様は正しかったみたいね」
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