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ひとり寿司第21章パート1




「ひとり寿司」をブログに連載します!


ひとり寿司



寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。

***


21



やだ、やだ、やだ! よりにもよって、こんなときに遅刻なんて!

レックスはタイヤを軋らせて、中央高速を降りてすぐのところにあるワサマタユ施設の大きな駐車場に入った。重いジムバッグをつかみ、ロビーへとヨタヨタ走った。

「レックス・坂井です。バレーボールのトライアウトに来ました」

受付担当者は、スポーツクラブの後ろにあるバレーボールのジムを指さした。

巨大なジムに入りながら、恐怖のために気を失わないよう努力した。新しいジムに行くと、その値踏みをする癖があるのだが、ここは、これまでに見たジムとは雲泥の差だ。天井はとても高く、ライトは眩しくないよう完璧に配置されていて、理想的な照明のコートだ。ワックスを塗ったばかりの床の上で、スニーカーの底が鳴り響いた。周囲の壁に並んだ新しいアルミニウムの観客席に取り付けられた木の椅子——折り畳まれているが、椅子を引っ張ったとしても、コートの周りにはまだ十分なスペースがある。最高級のネットは、たるみなく、二つのコートにピンと張られている。

レックス以外に女子が九人、サイドラインでウォームアップしていた。アジア人はレックスだけ——みんな彼女より一〇センチ以上背が高い。幸先が良くない。

彼女らはお互いの様子を伺っているようだった——お友達ごっこはしない、ここでは。バレーボールのトーナメントで会ったことがあるような顔を数人、見つけた。みんな優秀な選手だ。

(怖気づいちゃダメよ)靴を履き、ストレッチを始めた。さっきストレッチをしていた女子らはウォームアップを始め、ボールを投げて肩の筋肉をほぐし、その後、レシーブ、トス、そして最後にペッパー(対人レシーブ)。

レックスは急いでストレッチをした。どうしてまた遅刻してしまったのか? 確かに時計を確認したはずなのに。後悔と罪悪感が肩の筋肉を引っ張り、心拍が速くなった。

(やめなきゃ。緊張してる場合じゃないわ)

三人組でウォームアップをしている女子に近づいた。「誰か私とウォームアップしてもらえる?」

笑い合っていた三人は、笑うのをやめた。「もう終わったわ」氷のような青い目の金髪直毛がボールを取り、彼女の後をついてコートから出るようにと、自分の取り巻きに身振りで示した。

胸腔が溶鉱炉のようになり、手が震え出した。ネブカドネザル王なんてクソ食らえ——これ以上熱くなったら、シャデラク、メシャク、アベデ・ネゴもフライにしてしまいそうだ。二人組でウォームアップをしていた他の女子も、レックスを見ないようにしていた。

怒りにまみれて誰かの顔にボールをぶつけたいと思う時はいつも、視野が広がった。照明は明るくなり、ジムは大きくなった。ネットの小さい揺れ、ブラブラするコード、一人の女子がパスをしようと少し動かした重心——全ての瞬間を捉えた。

レックスは壁の方へツカツカと進み、ボールを投げて肩を慣らした。感情はなくなっていた——全てのエネルギーが、そのボールに集中していた。燃える炎、原子核の星のようだ。

技術的に最も難しいトスの練習に移った。一人でウォームアップするのは久しぶりだった——いつもはチームメートと楽しみながらペッパーをして体をほぐしていた。やっと今、彼女の筋肉は水のように流れ、その体は、難しい課題でも正確に動く。これからはもっとこういうウォームアップをしよう。

男女のグループがジムに入ってきて、そのうちの一人が笛を鳴らしてみんなの注意を集めた。レックスは、彼らの周りに集まる女子の輪に加わった。

「ワサマタユで男女混合チームと女子チームのコーチをやってるダレンです。今日は、この二つのチームに入るためのトライアウトで、ポジションは一つです」ダレンはクリップボードをちらりと見た。「さて、ワサマタユは、エリートスポーツクラブのネットワークに属しています。みなさん、男女混合チームと女子チームのトーナメント・スケジュールを受け取ってますよね」

他の仲間の方を身振りで示し、名前を呼んだ。

「こっちのみんなは男女混合チームと女子チームのメンバーで、ここにいるクリスタは僕のアシスタントコーチ」

クリスタが一歩前に出た。「じゃあ、ドリルを始めましょう」

おいおい、このドリルは、レックスが自分の中学生女子チームにさせるものより簡単じゃないか。それに、ボールの制御練習の中には、自分のチームに新しく取り入れられるものがありそうだ。疲れたが、ヘトヘトになるようなドリルではなかった。立ったまま顔の汗を拭いていると、中には前かがみになって息をきらしている者もいた。

(あはは)

彼女らはブロックが得意だろうと予測していた——身長があるだけでも、ネットでは効果的だ。ブロックのドリルでは、タッチはできたが、他の数人の女子のようにはできなかった。しかし、トスのドリルでは上出来だった。

一八○センチの敵がフロントゾーンでボールを叩くのを見た後、最後のグループにいるレックスはアタックラインに立った。レックスはもっと上手なアタックの仕方を習ったことがあった。

レックスは、初めの二回、コートの真ん中にきれいなアタックを送った。三回目のアタックを始める前に、ダレンがネットの向こう側に来て、ブロックに入った。彼は、彼女にうなずいた。

ドリルの途中で、彼がブロックに入った選手はいなかった。

ニヤリとした。彼だったら、高めのセットが必要だ。「五番でお願いします」

セッターは、空中で浮いているように見えるきれいな弧を描いたボールを送った。レックスはアプローチを始め、踏み込み、跳んだ。

ダレンのいいブロック——コートの真ん中に楽に打ち込むことはできない。ギリギリで体をひねり、ラインに沿ってボールを打ち込んだ。白線の上にまっすぐ落ちた。素晴らしい。

レックスと同じアタックのグループにいる二人の女子のため、ダレンは続いてブロックに入った。一人は押し返され、もう一人のアタックは高すぎて外に出た。

またレックスの順番がきた。今度は少し近づいてきたので、ライン・ショットは難しい。レックスのきれいなカットショットは、彼の左脇の真下に飛んだ。

二人は着地し、彼はニヤリと笑った。

液体カフェインのように、エネルギーが彼女の静脈を走った。肺と筋肉が二倍大きくなったような気がした。

ディフェンスのドリルでは、コートの後ろにいた二人の女子と組まされた。レックスは、ダークブラウンの髪の子——ボールホグ——から少し離れて位置をずらし、金髪——のろま——に近づいた。ネットの近くで強く短いショットを受け、残りのボールも、下で待ち構えた。セッターへのレックスのパスは、完璧で滑らかだった。

そして、終わった。レックスはほとんど汗もかいていない気がした。この四時間より、キンムンと砂の上で練習した時の方がずっと疲れた。

レックスが靴を履き替え終わる頃には、他の女子はすでにいなくなっていた。ダレンがドアのところに立って、レックスを待っていた。

彼女が通り過ぎる時、彼はハイタッチをした。さっと周りを見て、彼女の方に傾いた。「楽勝だったね」

体の中が火照ってきた——体中が光になった気がした。「ありがとうございます」

「クリスタとちょっと話したけど、誰を選ぶかは極めて明らかだ」ダレンは声をさらに低くしたが、その笑顔はエタノールのようで、レックスの顔はもっと赤くなった。「レックス、君がチームに入るのを楽しみにしているよ」

***

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