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「ひとり寿司」をブログに連載します!
ひとり寿司
寿司シリーズの第一作
キャミー・タング
西島美幸 訳
スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。
ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。
そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。
エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。
レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——
過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。
神様という方は実用的なジョークを使うものだろうかと、エイデンは思い始めていた。
勾配のある丘を走ろうと、わざわざ南サンノゼまで来たのに、何故この人にばったり会ってしまうのだろうか? 話すのが一番ためらわれる人。彼女は、彼に結婚を申し込んだことを覚えているのだろうか?
それに、レックスの家はこの近くではない。何故だろう?
レックスはまだエイデンを見つけていない——丘を登るのに苦戦している。少し足を引きずりながら。足首に何か問題があるようだ。
避けた方がいい。彼女は、彼のアラームシステムが警告を発する対象物そのものだった。きっぱり断ることを余儀なくされた、押しの強い女の子の友達で、その子の親戚でもあり、教会へ行くと言うだけではなく、実際、毎週、教会へ行くほど熱狂的なクリスチャン。常識的に考えて、彼女に近づくべきではない。
ただ彼女は、彼がその良識を失うほど魅力的でもあった。それに、同じバレーボールチームにいて、彼の携帯を盗み、結婚を申し込み、彼のマラソンのコースで待ち伏せしているという小さい事実もあった。
彼女に追いつこうと急いだ。
彼女は脇道にそれ、見えなくなった。
胃が、どさっと落ちて、そこに小さい空洞ができた。トレーニングコースからそれてしまえば、レースのために体調を整えられない。丘を登りながら、自分に蹴りを入れるものを失くした気がした。
一つ目の丘の頂上までダッシュしたら、肺が引き伸ばされた。降りてくる途中、彼は誰もいないスーパーの駐車場を突っ切って、ゴミ置き場の角を右に曲がった。
「ウップ!」
柔らかく軽い人とぶつかった。彼はよろめき、彼女は倒れた。
レックス。彼はレックスとぶつかったのだった。(嘘だ。神様、あんたって変なユーモアのセンスの持ち主だな)
絶対に、笑い声が聞こえたと思った。
「大丈夫? 君の足首——」彼女を助け起こそうと、手を差し出した。
レックスはそれを振り払った。「大丈夫よ」立ち上がって、数歩、歩いた。「でしょ?」
「足、引きずってるじゃないか」
「そんなことない」下唇を突き出した。
表情を抑える間もなく、眉毛が上がった。「分かった、分かった。引きずってない」
エイデンをにらんだ。「私をバカにしてる?」
「全然」
「ふん」振り向いて丘の上に向けた顔は、ガックリしているようだった。
「トレーニング中?」
「どうして分かるの?」
「トレーニングじゃなきゃ、走らないって言ってたよね」
「ああ」青白い頬が、朝日に当たって赤くなった。「あの……ごめんなさい。あの時は失礼なこと言って」
首が緩んだ。「別にいいよ」単純な謝罪なのに、彼は降参した。哀れなことだ。
「あなたもトレーニング中なの?」
「ああ」丘を見た。「もうすぐマラソンなんだ」
「そうなんだ、じゃあ、行ったら?」彼女は駐車場の方を向き、ポケットから車の鍵を引っ張った。
「トレーニング中じゃなかったの?」
顔をしかめた。「今日はあまりやる気がしなくて。最近……いろんなことがあってさ。あのブライダル・シャワーの他にもね」
「何言ってるんだよ、行くぞ」エイデンは丘を登り始めた。「早く」
レックスは混乱し、イライラした表情で彼をじっと見た。
彼は身振りで彼女に来いといった。「女々しいぞ」
この言葉で彼女が挑発されるのは分かっていた。もちろん、彼女は急に彼の後を走り始めた。
「女々しくないわ」彼を見る目は猛獣のようだった。
「もちろんさ」表情がなさすぎる顔を向けた。
レックスは眉をひそめた。
エイデンはニヤッと笑った。
レックスは、エイデンが笑った顔をあまり見たことがない。彼はいつも控えめで、落ち着いていた。何てこと、オーランド・ブルームみたいだ。彼女の心臓は、一定のリズムに落ち着く前に、少し飛び跳ねた。
彼は、彼女よりずっと早く走った。驚くことではない。本物のランナーと一緒に走るのは初めてだった。いつもはバレーボール友達とペースを決めるのだが、今はついていくのも難しい。
「頑張れ、できるよ。もうちょっとだけ、このペースで」
(ゼーゼー)
「僕、理学療法士でトレーナーだから」
「つまり——(ゼーゼー)——いじめのプロね」
彼は笑った。「調子を整えたいんじゃなかった?」
「もちろん」(ゼーゼー、ハアハア)「死にたくないけど」
「オッケー、じゃあ膝を上げて」
レックスの足は、アリゾナの太陽より熱くなっていた。肺は今にも爆発しそうだ。
「何のためのトレーニング?」息を切らしてもいない。嫌なやつ。
彼女は空気を吸い込んだ。「ワサマタユよ」
「すごい、おめでとう。バレーボール?」
「そう」
「もっと膝上げて。で、いつなの? トライアウト」
「土曜日」
「一週間しかないのか。ほら、怠けるな。膝を上げるんだ。選ばれたいんだろ?」
決意に駆り立てられ、お尻を槍で突かれたように、レックスは丘のてっぺんまで行き、反対側へ降り、それをもう一度、繰り返した。エイデンが汗をかき始めたときには、彼女は逆に嬉しくなった。
ちょうど良い時間に、二人はスーパーの駐車場に戻ってきた。レックスは全身が痛かった。頭も痛い。
「ごめんね。私がいたから、あまり真剣に走れなかったでしょ」これが逆の立場だったら、彼女は怒りまくっていたかもしれないが、エイデンは肩をすくめただけだった。
「昨日はもっとタフなトレーニングをしたんだ。君が帰ってから、もうちょっとやってくよ」
(うそ)
レックスの様子を観察しながら、エイデンは頭を傾けた。「口、閉じた方がいいよ。周りに蜂がいるから」
彼女は、彼に向かって顔をシワクチャにした。
彼は微笑み、特徴のない顔から素敵な顔へと変わっていった。
何故、今までそのように見えなかったのだろうか?
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