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ひとり寿司第17章パート1




「ひとり寿司」をブログに連載します!


ひとり寿司



寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。

***


17



「レックス。申し訳ない。数週間前に売り切れたんだよ」

気落ちした、一瞬だけ。「ロジャーさん、同窓会で持ってるブロックがよくありますよね。二枚だけ譲っていただけないでしょうか?」

「そうだねえ」ロジャーの声がゆっくりになった。「可能性はあるかもな」

やっぱり。「広告料を少し割引できるかもしれません」

「いや、広告は、もうあまり必要じゃないんだ」

(何だ)「ホームページにプレミアム・ストーリー、っていうのはどうですか? UWのことで強調したいのはどんなことですか?」

「野球チームは調子がいいんだが、席が埋まらないんだ」

「ホームページにストーリーを載せるのはどうでしょう」彼を引き寄せた。

「次の試合にスカウトが来てくれてもいいんだけどね」

分かった! 彼が探っていたのはこれだった。「SPZはスカウトにコネがありますよ」実際、今日は、ウェブサイトに載せられたばかりの高校チームのスタッツのことで、一〇人のスカウトから電話がかかってきた。

「レックス、チケットのことは、ちょっと他の人と話をさせてくれるかな。また電話するよ」

「ありがとうございます、ロジャーさん」電話を切った。有力者が取引を成立させたとき、またはストックブローカーがウォールストリートで成功したときの快感を、今では理解することができた。

レックスはウォーターボトルに手を伸ばした。空っぽだ。

音が鳴らない電話をチラリと見た。ロジャーからコールバックがある前に、水を補充する時間がある。ナルゲンボトルのフタを閉め、通路を通って冷水機の方へ向かった。

キュービクルに座っているグレイの長い足が通路に突き出しているので、それをよけた。サンノゼ州立大学の野球チームのことで、何か深刻なことを電話で話しているようだ。ブラウンのキュービクルからは、彼の声が流れてくる——多分、彼も電話中——ブラウンの足が通路に突き出るのが見えた時には——遅すぎた。

つまずきながら、腕が激しく揺れた。(パシッ!)ウォーターボトルが何か硬いものにあたった気がした。

「ウップ!」

手を突き出したが、薄い仕切りはダンのキュービクルに倒れた。(ゴン!)仕切りがダンの頭に当たる音がした。

「あうっ!」

レックスと仕切りが倒れた。仕切りがダンの体に当たり、レックスはひっくり返った。ウォーターボトルのループを手に引っ掛けていたのだが、その手は乱暴に揺れ、ボトルは突然放たれた。

二つのことが一度に起こった。

キュービクルの仕切りが、ダンを床に叩きつけた。レックスのウォーターボトルは、上部が重くなっている冷水機の方に飛んでった。

仕切りが倒れた。

冷水機が倒れた。

水は事務所の薄いカーペットに浸み込んでいき、海の波のように彼女に押し寄せてきた。そして、洋服の中まで浸み込んできた。

「レックス! 大丈夫?」グレイが来た。一方の腕を彼につかまれ、もう一方の腕はブラウンがつかんだ。二人は注意しながらレックスを引き上げた。助けてもらったことには感謝するが、すぐに片足でバランスを取り直し、彼らの手を解きほどいた。

冷水機のボトルを元に戻して事務所の洪水を止めようと、ダンは走った。「大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ」

「本当に? 怪我してない?」

ダンはこめかみに巨大な赤い傷があったが、彼女のことだけに全注意を集中させようとした。

「そうだよ、君、本当に大丈夫なの?」

「ダン、私は大丈夫だから。あなたは? ブラウン」

ブラウンは腫れたあごをさする手を止めた。そうだ、レックスのウォーターボトルが最初に当たったのに違いない。プリンスチャーミングのように笑顔をきらめかせた。「僕は、全然大丈夫だよ」

うーん、トワイライト・ゾーンに迷い込んだようだ。「一体みんな、どういうこと?」

ダンが瞬きした。「どういう意味?」

「どうして急に親切になったのよ」

グレイは手を胸まで上げた。「レックス、僕らも苦しんでるんだ。そして、同僚として君のことを深く尊敬している」

「いつから?」

「君が電話で話すのを聞いた時から」グレイはウォーターボトルを彼女に渡した。「AAたちは君と話すのが好きなようだね。君、いい仕事しているよ」

彼の目は誠実そうに見えた。レックスは彼の称賛を好意的に受け止めた。

グレイはデスクの上の書類を指さした。「広告の注文、今週だけでも一〇%から二〇%は増えてる」

彼らが気づいていたとは思わなかった。レックスが同窓会リエゾンのポジションをもらったことについて、誰もが癇癪を起こしていると思い込むべきではなかった。

「ダン、タオルを持ってきてあげて。はい、隣のオフィスの冷水機から水を入れてきてあげるよ」グレイが彼女のボトルを取った。

「ありがとう」

「ブラウン、君は彼女をオフィスまで送って」

「いいわ、私は大丈夫だから」通路を戻り始めた。

「はい、タオル」ダンはとてもひたむきに見え、レックスが断らなければ、彼女のお尻の水も拭いてくれるような雰囲気だったので、彼女は彼の手からタオルをとった。「本当に大丈夫よ、どうもね」

「何か要るんだったら、何でも聞いてくれ」ダンは微笑んだ。

「ありがとう」彼女は自分のオフィスに入り、ドアを閉めた。

***

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