Thursday, April 21, 2022

ひとり寿司第15章パート3




「ひとり寿司」をブログに連載します!


ひとり寿司



寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。

***


レックスはコンピュータを起動させた。IT部門の人が、すでにユーザをリセットしてくれたようだ。ログインのスクリーンには「ASakai」と出てきた。パスワードは? 「ASakai」とタイプしてみた。

大当たり。

そうそう。いい会社かどうかは、そこのIT部門を見れば分かる。

すでにメールが来ていた。ウェンディ・トラン——人事部の若い娘の名前だ!——は、人事部で二時にオリエンテーションの予定を入れていた。ということは、今日の電話を返す仕事は午前中に終わらせなくてはならない。

レックスは一枚目のメモを取った。アリゾナ州立。マーク・バーンズ。

深呼吸。ラッセルは何と言ってたっけ? 彼らは、ジュディを好意的に受け入れていなかった。しかし、ジュディはどんなことをしたのか? 何と言ったのか? レックスが同じようなことをして、このマークという男性を遠ざけてしまったら、どうすればいいのか? 初日に失敗するかもしれない。ボロ負けだ。

もう一度、深呼吸。ちょっと考えてみよう。ラッセルはジュディについて、スポーツをよく知らなかった、とほのめかしていた。もちろんレックスだって、アメリカ中の大学のありとあらゆるスポーツのプログラムを知っているわけではない。この前のトーナメントで「アリゾナ大学」が勝利した時に、「アリゾナ州立大学」の素晴らしいゴルフチームを褒めたたえたら、どうなっただろう? SPZの評判は損なわれ、会社は倒産するかもしれない。

もう一度、深呼吸。ナイキのスローガンのように、Just do it(やるしかない)。(自己紹介をするだけよ。もし失敗してクビになったとしても、先週の金曜日より悪い状態になることはないんだから)

番号を押した。

「アリゾナ州立同窓会、マークです」

「こんにちは、マークさん。SPZのレックス・坂井といいます」

「誰だって?」

「レックス・坂井です。新任の同窓会リエゾンです」

「ジュディを辞めさせた、ってこと?」

「いいえ、妊娠するために辞めました」おっと、ちょっと違うな。「つまり、一身上の都合で退職されました」

マークは、「厄介払いか」というように聞こえることをつぶやいた。

レックスは咳払いした。「今日お電話したのは——」

「ジュディに残した伝言、聞いてくれた? うちが主催する新しいPAC10のバレーボール・トーナメントのウェブ広告のことなんだけど」

「すごい! バレーボールのトーナメントを主催されるんですか?」金切り声より少し低い声が出てしまった。「と言うか、楽しみですね」運がいい——大学バレーボールの関係者と付き合えるなんて。

「今年はアリゾナ、ワシントン、バークレーを招待したんだ」

「アリゾナ州立とワシントンの試合はすごくいいと思いますよ。新しいコーチが強いチーム作りをしてますから」

「そうそう、だけど赤シャツ選手だった一年生を入れたばかりなんだ。一九八センチのアウトサイドヒッター」

「名前は?」

「ロレイン・リー」

「中国系ですか?」

「ハーフだ。母親がスイス人」

「その選手を見るのを楽しみにしています」

「そうだね」一瞬の沈黙は、気まずいというより思慮深い沈黙に思えた。「君、野球は分かる?」

レックスは頭を拷問にかけた。アリゾナ州立の野球の試合を少し見たことがあったのを思い出した。「今年はどうですか?」

「不安定だ」

「キャプテンが卒業しましたからね。去年、彼は素晴らしかったです」

「そうなんだ。彼はエルマーズグルーみたいにチームを一つにしてくれた。新しいキャプテンはデイブ・ギャレットだ」

「ああ、覚えてます。彼も悪くないですね。二、三ヶ月もすれば、慣れてくると思いますよ」

「僕もそう思うよ。さてと、電話をくれてありがとう、レックス。フェニックスに来ることがあったら、連絡するといい。その週末にある試合のチケットを取ってあげるから。フットボールでもいいよ」

(すごい!)「マークさん、ありがとうございます。それじゃあ、バレーボール・トーナメントの広告のことで必要な情報をメールしてもらえますか? すぐに取りかかりますから」一体何をすればいいのか見当もつかなかったが、向こうのキュービクルで嫉妬しているバカどもと対戦できそうなほどいい気分だった。「アドレスはA-S-A-K-A-I @ SPZ.comです」

「ありがとう、レックス」(カチャッ)

「やった!」レックスは勝利の拳でガッツポーズを取った。

(ピン)あ、メールが来た。サイト全体のニュースだった。「SPZスポンサーシップ・プログラム」えっ? クリックしてみた。

突然、開いた戸口にふらりと頭が見えた。グレイがのぞき込んでいる。だがその目は、ソフトボールのように大きくなり、ソフトボールの色をしていた。「すげっ」

「何が?」

「君、スポーツが分かってるな」

「当たり前でしょ。だからラッセルに採用されたのよ」視線をメールに戻した。(秋の四半期から、SPZは——を提供)

「いや違う、本当にスポーツのことが分かってる、っていう意味」

レックスは、コンピュータの画面から視線を引っ張り戻した。「何よ——Y染色体がなきゃスポーツは理解できない、って思ってるの? 考え直すべきね、あなた」メッセージに戻った。(SPZは、三つの地元の青少年クラブチームを全面支援——)

「いや、僕はただ——」

「このメールが読みたいんだけど!?」

グレイは煙のように消えた。最高、怒りっぽくて感情的という評判を築いてしまったかもしれない。

メールニュースに戻った。これはもしかしたら完璧かもしれない。SPZがレックスの女子チームのスポンサーになってくれたら、九月から支援が始まる。

プレイオフの後。

祖母は、マリコの結婚式がある六月まで資金を出してくれるはずだ。何とか祖母をだまして、プレイオフが終わるまでお金を出してもらえたら、八月以降、ボーイフレンドをキープしておく必要はない。あとはSPZからお金が入ってくる。

これよりいいことがあるだろうか? 自分の新しい仕事に感動した。新たなスポンサーの可能性。それに、九割が男性社員という職場——この中に一人ぐらいは、クリスチャンで、彼女の仕事を欲しがらず、「エペソ」のリスト(それほど長いリストではないのだから)に合う男性がいるはずだ。

レックスは決心を固めた。八月まで付き合う男性を見つければよいだけ。祖母にあっと言わせて、夏の終わりまでお金を出してもらえたら申し分ない。テストステロンを帯びたスポーツ狂の大集団を利用してなくては(さっき怯えて逃げていったやつなんて、ちょうどいいんじゃないだろうか)。

そうだ、このスポンサープログラムの申込書を記入しなくてはならない。デスクの上を探した。

ジュディが、ペンを全て持ち帰ってしまっていた。

***

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