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ひとり寿司第14章パート2




「ひとり寿司」をブログに連載します!


ひとり寿司



寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。

***


**********


今度こそ、キンムンをこてんぱんにする。

レックスは、一番下手なパッサーに真っ直ぐサーブした。前衛にいる長身のアタッカーは、多分、ボールをそらすだろう。やっぱり、ボールはそれた。慌ててトス、そして、効果的なアタックにならなかった。

ボールはレックスのチームに移り、四番セット(アウトサイドヒッターへの高めのパス)——キンムンの守りのスキをついた。

得点。

レックスは、ネットの向こう側にいるキンムンに、思わずあの「笑って指さす」しぐさをした。今週末のトーナメントはお互い別のチーム——キンムン対レックスだった。自慢する権利——大事なのはこれだけだった。

長身の白人男性が二人、数メートル離れたところに立っていた。二人ともレックスをじっと見ているようだった。

何だろう? 次のボールをサーブしながら、レックスは気まずい震えを払い落とした。

しかし彼女のサーブは遠くに飛び過ぎ、ライトスパイカーはセッターに完璧なボールをパス、セッターはキンムンに完璧なトス、そして完璧なラインショット。サイドアウト、そして彼のチームの得点。

レックスは構えた。キンムンはどんなサーブを出すだろう? 多分、短めのフローターサーブか。

ちょっと待った、あの白人男性は、さっき彼女の写真を撮っていたようだ。

レックスは、キンムンの深く強いサーブを受け損ねた。彼のチームの得点。

歯ぎしりした。拳で太腿を叩き、その痛みで自分を集中させようとした。

得点。「みんな、何やってるの、声かけて!」

得点。「パスしよう! やるよ!」

得点。「ダブルブロック!」

得点。「タイムアウト!」後衛に立って、チームが周りに集まってくるのを待ちながら、レックスはお尻の片側に重心を移した。

「どうしたのよ、みんな」

ヒッターの一人が目で合図した。「よく叫ぶね」

「叫んでないわ! ええっと……叫んでないわ」白人男性二人は話をしながら、時々、レックスの方をチラチラ見ている。他の選手のことは全く見ていなかった。レックスはゾッとした。「みんな、行くわよ。キンムンをやっつけよう——じゃなくて、キンムンのチームを」

レックスのセッターは、あきれた表情をした。

五点差で負けた。

レックスは、相手チームとネットの下で手をたたき合い、バッグがおいてある床に座った。遠い方の壁にもたれ、ゲータレードをごくごく飲んだ。

目を閉じると、落ちたボール、ブロックされたアタック、そらしたパスが浮かんできた。その半分は自分の責任だった。ここまで調子が悪いのが信じられなかった。あの二人の男とその不気味な視線が、この試合をそこまで混乱させてしまったなんて。あの二人は一体、誰だったのだろう?

出て行ったようで、その姿はなかった。もしいれば、二人の方へ歩いていき、そのうち一人を引っ叩いていたかもしれない。あの、背の高い方。彼はボコボコにされるだろう。

「レックス、どうしたんだよ? ガッカリだな」キンムンが隣に座った。

彼女は頭を抱えてうなった。「ほっといてくれる?」

キンムンはレックスを突っついた。「君が元気になるようなニュースがあるんだけど」

レックスは、少し離れた。「私の機嫌を取れることなんて、何もないわよ」

「本当にそう思う?」

彼のいたずらっぽい声は、不本意にも彼女の興味をそそった。「何よ?」

「ワサマタユに空き出たんだって」

レックスは驚いた。「うそ! それって、本当なの?」この有名なスポーツクラブの順番待ちリストは何年分もあった。レックスも、最低五年は待っている。

キンムンは肩をすくめたが、その笑顔が全てを物語っていた。

「あそこのバレーボールチームは絶対に空きが出ないのよ」

「女の人が一人、ドロップアウトしたんだ。半月板がほとんどなくなってて、もうプレイできないらしい」

レックスの心はグルグル回り始めた。彼女のようなアマチュアアスリートにとって、ワサマタユはバレーボール・キャリアの頂点であった。このクラブは、エリートクラブの全国的組織に属していて、そこのスポーツチームはアスリートに厳格な要件を課している。だから、クラブ対抗のトーナメントは非常に競争が激しかった。「私は順番待ちリストの何番にいるのか調べなきゃ」

「残念だけど、僕には分からない」

「それに、入部のためのトライアウトに向けてトレーニングもしないと。トライアウトに呼ばれるのは何人?」

「普通は一〇人」キンムンはコートを見回した。

「まずは選ばれなきゃ」

「僕のチームが審判だ。行くよ」コートの方へ急いで行ってしまった。

ワサマタユ・スポーツクラブに入るのは長年の夢だっただけでなく、レックスの問題を全て解決できるかもしれない。会費は安くないから、会員は優れたアスリートであることに加え、そのほとんどが高い支払い能力を持っていた。

女子バレーボールチームのスポンサーになってくれそうな、裕福で若い選手が山ほどいるだろう。それに、レックスのスポーツの能力に見合う、ハンサムで感受性が豊かなクリスチャンのソウルメイトを見つけられるかもしれない。

もしトライアウトに呼ばれたら……。もし選ばれたら……。そして、選ばれなかったら返金されるとはいえ、トライアウトの前に支払わなくてはならない入会金を払うお金があったら……。

ほどほどに良い給料をもらっていたペアのエンジニアだった時なら、心配する必要がないことだった。レックスは、SPZから採用通知をもらっていたが、彼女のポジションでどんな仕事が要求されているのかは分からなかった。最低賃金ではないけれど、以前の給与とは比べものにならなかった。

「もし」が多すぎる。

祖母の最終通告を考えると、頭が痛くなった。アジア人でバレーボール関係の友人に、チームのスポンサーを頼むことはできない—— 祖母の手が伸びているからだ。しかし、最終通告の第一の目的——デート相手を探す努力はできる。

ジムを見回した。ボーイフレンドのふりをして欲しいと、誰に頼むことができるだろうか?

いや、それはできない。長期的な関係でなければ。マリコの結婚式が終わってすぐ「破局」してしまったら、祖母は資金を引っ込めるだろう。

じゃあ、レックスは誰とデートに行けば良いのだろう? 壁にもたれてくつろいでいる選手の列を一人ずつ見ていった。既婚者、デート中、既婚者、既婚者、デート中、別れたばかり、離婚したばかり、既婚者、デート中。

誰が独身だったっけ?

ジム、スティーブ、そしてニール。

ジムはすでに、あの変わった女の子にストーカーされている。

スティーブは、スターウォーズの人形コレクションにちょっと、とりつかれている。

ニールは、いつもニンニクと魚のにおいがする。

バレーボールのコミュニティは小さ過ぎた。レックスはほぼ全員を知っている。新しい血統が必要だ。

SPZは新しい血統だろう。ワサマタユもそうだ、入れたら。それまでは……SPZか。

よく知らない男が数人いた。その列を見下ろしていくと、全員白人であることに気がついた。

ほんとに?

もう一度、その群れをサッと見た。そうだ。レックスが知らないのは、ほとんど白人かヒスパニックの男性だった。

(私って人種差別主義者かしら? ひどいわ。これはもしかして——?)

彼が白人だったから。

肩をすくめた。暗い思い出を脇へ追いやった。この人たちは、多分いい人たちなのだろう。彼らのことをもっと理解しようとしなければ。

汗が首をつたって落ちてきた。そっと、においを嗅いでみた。

また今度にしよう、汗臭くない時に。

***

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