Thursday, March 03, 2022

ひとり寿司第12章パート3




「ひとり寿司」をブログに連載します!


ひとり寿司



寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。

***


**********


祖母がガミガミ言うという理由だけで死んだふりをするのはやめた。だがレックスはバカでもない。デート相手のみならず、スポンサーを探すという二つの目的を持って、木曜夜の独身者グループに駆け込んだ。そこは、祖母が侵入することのできない唯一の場所——教会だ。

祖母は、レックスとその三人のいとこの信仰を理解していなかったが、祖母ですら神様に歯向かうことはできない。

先週の日曜日、レックスは教会の年配の人たちに話してみた。彼らはみんな親切だったが、少しよそよそしいところがあった。自分たちと同じ年代で、日本語や中国語や韓国語など、自分の言葉を話す人と一緒にいることを好む傾向があり、言葉のバリア自体のために、レックスを遠ざけているところがあった。スポンサーになって欲しいと頼むこと自体が失礼なようで、気まずく感じた。

それに、結婚していて子供がいる人たちとはほとんど話したことがなかったので、どうやってアプローチしたらいいのかも分からない。レックスの名前も思い出せない人たちにスポンサーになることを頼むのも、少し失礼なように思える。

だから、自分が知っている教会の人たち——独身者をターゲットにした。

それなのに、独身者グループが始まる前の貴重なおしゃべりの時間に間に合わなかった。レックスを迎えに来るはずだったトリッシュが二○分過ぎても現れず——そう言うレックスも六時半までに出かける準備はできていなかったのだが、六時四○分には準備ができていた ——レックスは自分のホンダに飛び乗って、教会へ向かったのであった。

ワーシップリーダーがギターをチューニングしていた——レックスに残されたのは五分間だけ。友情以外のことには興味がないと、男子全員に対し明言していたことを、今頃になって後悔した。みんなレックスのことを怖がっているのだろう。

しかし、クリスチャンの慈善に対する感性に訴えることができるかもしれない。「ヘイ、アルビン」

「やあ、レックス」捕獲された動物のように、用心深い顔つきをしている。

レックスは心の中で、「エペソ」のリストを思い出していた。アルビンはクリスチャン(誠実な出席者)で、いい仕事(エンジニア)を持っているが、身体的な魅力がなく(目が丸くて口が大きいため、ヒキガエルのように見えた)、面白いスポーツもせず(釣りが好きだなんて、レックスには一ミリの忍耐も持てないスポーツだ)、フケがひどかった(もう十分)。

「アルビン、中学生のバレーボールチームに寄付するのってどう思う?」

アルビンの目が明るくなり、目が電気で光っているカエルのように、実に薄気味悪い顔になった。「ああ、中学生ミニストリー? すごくいいね」

「あの、ミニストリーってほどじゃなくて……」

その光が消えた。「違うの?」

確かにミニストリーみたいなことはしている。「私のことを信頼してくれてるから、時々男の子の問題なんかを聞かされると、神様のことを話すように努力してるわ」

「それって伝道?」

「ええっと……」

「その子たちが死に到るほど罪深いことや、個人的な救い主が必要なことに対して、目と心を開かせるの?」

レックスは瞬きして彼をじっと見た。

アルビンは、それを励ましと捉えたようだ。「告白の祈りをして、キリストに明け渡すように導いて、イエス様が心の中に住んでくださるよう招くの?」

「ちょっと……違うかな。私はバレーボールのコーチだから」

「そのアウトリーチ(奉仕活動)は、未信者が、『神様の子供としての愛』を経験するように招くためのもの?」

「そうね……誰でも参加できるの。クラブチームだから」

「試合の前後に祈って、礼拝する?」

「それは、しないわ」

「じゃあ、その子たちと何をするの?」

「神様が愛していて、その子たちの問題を気にかけてくれてる、って言うわ。友達のことを赦して、男の子たちが気に留めてくれることを祈ってる、って言うの」

ショックを受けたアルビンは、一歩ひいた。「それはミニストリーじゃない。娯楽だね」

「娯楽のどこが悪いのよ?」

口がとても小さく閉じられたので、ほとんどあごの中に消えてしまった。「悪いけど、神様に全ての名誉と栄光を捧げるものじゃなければ、神様のお金を捧げることはできないよ」

レックスは彼をにらんだ。「結構よ」

次の獲物。

注意深く選ばなくては。アルビンみたいなのはいらない——

「みんな、座って」ワーシップリーダーは、十二弦のアコースティックギターでコードをかき鳴らした。

チッ、アルビンのために時間を無駄にし過ぎた。

席に座り、「言い尽くせない」という歌が始まると、レックスは自分自身の中に引き込まれていった。歌いながら、その歌詞がいかに自分を居心地悪くさせているかを無視しようとした。何故、神様を言葉で言い尽くすことができないのだろう? 神様は、人の語彙を増やすよう努力したほうがいいのではないだろうか? この、神様が無限であるということ自体が気に入らなかった。

次は、「なんと素晴らしい神」という歌——この歌は我慢できた。神様は素晴らしい。歌いながら、初めて信じた時に感じた偉大なものに引っ張れられる感じ——信じる以外に選択肢はないほどレックスを圧倒する力を感じた。

独身者と青年グループの世話をしている副牧師は、神様を信頼することについて話している。スポンサーやボーイフレンドを見つけることについて神様を信頼しているのだから、これはとても納得できる。そう、神様が助け舟を出してくれる。やれるはずだ。

会の終わりに牧師が祈り終わるとすぐ、レックスは次の標的を見つけた。急に席から立って、ランディの隣にドスン、と座った。

「ヘイ、ランディ。中学生のバレーボールチームをサポートする気ある? とてもいい機会なん——」

「ごめん、レックス。海外宣教しかサポートしない主義なんだ」

レックスは二、三回瞬きした。「どうして?」

「イエス様はすべての国で弟子を作りなさい、って言ってるよね」

「アメリカは国よ」

ランディは手を横に振った。「僕らは自由に教会へ行けるけど、ほかの国では、福音を聞く機会すらないところもある」

首が痒くなった。つまり胸から上が火照ってきて、つまり癇癪を我慢できなくなってきた。「アメリカでもインドでも、貧困で死ぬ人はいるじゃない」

「だけど、インドの人は、キリストのことを聞いたことがないから、もっと大事なんだ」

ほっぺたの内側にレモンが入っているような気がしてきた。「私は家族にクリスチャンになって欲しい、って思ってる。ほとんどの親戚は仏教徒だからね。彼らはアメリカに住んでるわ」

ランディは肩をすくめた。「僕の家族は、もうクリスチャンだよ」

(鼻から息を吸って、鼻から息を吐いて)わざわざランディとあのリストを比較するのはやめた。リストに入れることがもう一つ:(神学上の考え方が、キリストを知らないアメリカ人を除外するものではないこと)

レックスは、少人数だった、その夜の独身者グループを見回した。ゼロ勝二敗、だけどもしかしたら——

携帯電話が鳴り出した。「ハロー?」

「レーックス?」

「トリッシュ? 何かあった?」

「レーックス」(息を吐く音)「迎えに来てくれる?」

「酔ってる?」

「ちょーっとね」

ランディがびっくりした目でレックスを見つめている。おっと、声が大きすぎたようだ。聞こえないふりをしている人も数人いた。

投げるようにバッグを肩にかけ、立ち上がってドアの方へ向かった。「どこ?」

「ええっと……イエローフィーバー・クラブ」

ナビで調べた。「そこから動かないでね。それで、着いたらどこに行けばいい?」

「車……開かないの」(クスクス笑い)「ハンドルがなくなっちゃった」

***

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