Skip to main content

ひとり寿司第10章パート2




「ひとり寿司」をブログに連載します!


ひとり寿司



寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。

***


**********


何で~! 遅刻だ!

レックスは自分のオンボロ車に飛び乗り、ドライブウェイから車を急発進させた。プロレーサーのように勢いよく車線を変えながら、ハイウェイ85号をサニーベール方向へと走った。

デアンザ通りでハイウェイを降りた。SPZの巨大な四角いビルが目の前に立っている。右側のレーンに飛び移った——

(キキキキーッ! ガツッ!)

右前方の衝撃のために車が横に滑り出した。胸が剥ぎ取られるように痛い。そして、不気味なほど静かになった。

太陽が明るい。音は聞こえない。それに、なぜ息が出来ないのだろうか?

あえぎながら息を呑んだ。そして、もう一度ゴクリ。耳は機能を再開し、後ろの車が鳴らすクラクションの音が聞こえた。

胸が痛い。心臓麻痺を起こしたのだろうか? 違う、面接用に着ていたブラウスの薄い生地にシートベルトが食い込んでいて、胸骨の上が、ひりひりする。

これは夢だ。これは夢だ。これは夢だ。

相手のドライバーは、エベレットのように恐ろしい顔つきをした年配の男性で、船乗り以上に口が悪かった。議論の余地がないほど自分に非があるときは特に、何も言ってはダメだ、という父の警告をレックスは思い出した。保険の情報を交換した。

ラッキーなことに、その事故は小さいショッピングモールの駐車場に入る入り口から一メートルも離れていないところで起こった。駐車スペースまでその小さい車を押していくに足りる体力はあった。

ただ、面接の時間を三○分過ぎていて、ゴムタイヤのにおいが洋服に染みついている。

ひとブロック先にあるSPZのビルまで、レックスはゆっくり走った——ハイヒールでできる限り早く、よろけながら——ガラスのドアを勢いよく通リ抜けて、空調の効いた中へ入り、受付デスクに倒れこんだ。「レックス・坂井です。遅れましたが、面接に来ました」

受付嬢の代わりに警備員がデスクに座っていて、冷静な表情を向けた。キーを二、三回叩くと、ミニプリンターからレックスの情報が入ったカードがブーンと音を立てて出てきて、そのIDタグが彼女に渡された。

「ホールをまっすぐ行って、左に曲がり、C12番会議室で待っていてください」

レックスは空いているドアの中をチラチラ見ながら、通路をすっ飛んで行った。誰もいない大きなオフィスが二部屋、会議室が二部屋あった。角を左に曲がった。

「ちょっと!」

何か温かい——いや、何か熱いものが前ではねた。レックスはかがんだが、遅すぎた——下着の中までポタポタ垂れている。

コーヒーだった。においからすると、とても濃いコーヒー。白いブラウス全体にかかり、細身のスカートにも縦方向の細い線が入っている。

厚化粧の女がにらんでいた。「前見て歩きなさいよ、自業自得だわ」

ムカつく! 「もう少しぜい肉が少なければ、ぶつからなかったんですけどね」

声が出ないあえぎ声をあげるように、その女性は鮮やかな赤紫色の唇を開け、甲高いうめき声をあげながら、プリプリと去っていった。レックスは、その女性がオフィスの中へスタスタと歩いて行き、ドアをバタンと閉めるのを見ながら、洋服に飛びはねたコーヒーにスチームミルクをかけられたように熱くなっていた。

トイレのドアはまだ過ぎていないので、スタッフラウンジが見えるまで歩いた——あのコーヒーは多分そこから来たものだろう。ペーパータオルを数枚つかみ、C12番会議室へと急いだ。

待っている間に、洋服のシミを軽く叩いた。一〇分。二○分。

どうしたのだろう?

受付デスクまで戻った。別の警備員がカウンターの後ろに座っている。

「二○分前に着きまして、別の警備員さんにC12番会議室に行くよう言われたんですが、どなたもいらっしゃいません」

「お名前は?」

レックスは自分の名札を指さした。

警備員はそれをコンピュータに入力している。「ああ、坂井さん、D22番会議室の間違いです。みなさんあなたをお待ちですよ」

レックスはヒステリックに叫びたいのをぐっと耐えた。「どこですか?」

「階段を上がって右に進み、左側二番目のドアです」

この忌々しい細身のスカートでは、階段を一段飛ばしに登ることはできない。熱くなり、息を切らして会議室に入った。三組の目が彼女を見つめていた。

少し白髪が入った年配の紳士が受話器を置いた。「警備員に別の会議室に行けと言われたそうだね」声の調子から、レックスのことも警備員のことも信じていないように思われた。

「申し訳ありません」(息切れ)「最初の(——息切れ)——警備員さんが(息切れ、ゼーゼー)」

「気にしなくていいよ」長細い顔の中年男性が、席を指してレックスを促し、その白髪の男性と、若いそわそわしている男性を紹介した。「君の履歴書のコピーを取ってないんだけど、持ってきてますか?」

「はい、もちろんです ——」レックスは革のフォリオを開き、つかんだ——

一枚だけ。他のコピーはどこへ行ったのか?

うちのプリンターだ。急いで家を出たので、忘れてしまったのだった。「あの……一枚しか持ってませんでした」

そわそわした男はあきれた表情をした。

なめらかなプラスチックの肘掛けに手を置いて、レックスは椅子に腰掛けた——

(うっ、何これ)

肘掛け全体が、糊とバターにはさまれた十字架のように何かベタベタ、ぬるぬるしていて、それが今、レックスの手のひらを覆っている。

これは短すぎるか、長すぎる面接になりそうだ。

***

電子書籍
アメリカKindle
日本Kindle
Apple Books
Kobo/Rakuten
Google Play
印刷本
アメリカAmazon
日本Amazon

キャミーのニュースレター

私のEメールニュースレターにサインアップしてください。ウェルカムメールが2, 3回送られた後、1ヶ月に1回のペースでメールが届きます。時々日本語ではないメールが届くと思いますが、お許しください。

“配信を確認してください。” のメールを送ります。 メッセージの中にある確認リンクをクリックして、あなた本人であるかどうかを確かめて下さい。大変申し訳ありませんが、“配信の確認をしてください。” のメールは英語になります。

* が必要です。

メールの配信を中止されたい方は、メールの下にある「購読中止」リンクを使うか、camy@camytang.comまでメールをください。

個人情報保護方針: 私はあなたの個人情報を尊重しています。Eメールアドレスを含めた個人情報は、第三者に開示・提供しません。

マーケティングプラットフォームにメールチンプを使っています。下をクリックして購読することにより、あなたの情報がメールチンプに送られて処理されることを了承します。メールチンプによるプライバシー保護の実践についての詳細は、こちらです。

Comments

Popular Posts

Merry Christmas! Enjoy The Spinster's Christmas

As a Merry Christmas gift to all my blog readers, I’m going to be posting my Christian Regency romantic suspense, The Spinster’s Christmas , for free on my blog! I’ll be posting the book in 1000-1500 word segments every Tuesday and Friday. (When I do the calculations, it’ll finish around the end of May.) Why am I posting a Christmas story when it won’t be Christmas in a week? Because I can! :) The Spinster’s Christmas is the prequel volume to my Lady Wynwood’s Spies series . Right now I’m editing volume 1 of Lady Wynwood’s Spies, and it’s on track to release in 2020. (If you’re on my Camille Elliot newsletter , you’ll be sure to hear when it’s available for preorder.) I anticipate that the Lady Wynwood’s Spies series to be about ten volumes. I think the series story will be a lot of fun to tell, and I’m looking forward to writing up a storm! Below, I’ll be listing the links to the parts of The Spinster’s Christmas as I post them. (I created the html links by hand so please l

Tabi socks, part deux

Captain's Log, Stardate 07.25.2008 (If you're on Ravelry, friend me! I'm camytang.) I made tabi socks again! (At the bottom of the pattern is the calculation for the toe split if you're not using the same weight yarn that I did for this pattern (fingering). I also give an example from when I used worsted weight yarn with this pattern.) I used Opal yarn, Petticoat colorway. It’s a finer yarn than my last pair of tabi socks, so I altered the pattern a bit. Okay, so here’s my first foray into giving a knitting pattern. Camy’s top-down Tabi Socks I’m assuming you already know the basics of knitting socks. If you’re a beginner, here are some great tutorials: Socks 101 How to Knit Socks The Sock Knitter’s Companion A video of turning the heel Sock Knitting Tips Yarn: I have used both fingering weight and worsted weight yarn with this pattern. You just change the number of cast on stitches according to your gauge and the circumference of your ankle. Th

How can I pray for you?

Photo credit: lalalime.blogspot.com 日本語訳は下をご覧ください。 I hope you had a good Thanksgiving, taking time to be still and remember God’s grace. My IBS has gotten a little better, but I’m still not entirely in control of my symptoms. There are simply too many things I don’t know if I can eat or not, and when I try things, if they affect my IBS, then I’m out for about a week at a time. My writing has slowed down more than I’d like. Please pray for God to heal my IBS, and for me to learn what God wants me to learn by allowing these struggles. Just as I’m struggling, if you are too, remember that God is with us and has a reason for everything that happens to us. Lord, thank You that You are always with us and have control over everything that happens to us. Help us to surrender to You and do Your will, no matter what is going on in our lives. Amen How can I pray for you today? Please leave me your prayer requests! Prayer requests can sometimes be private things, so to keep your

No Cold Bums toilet seat cover

Captain's Log, Stardate 08.22.2008 I actually wrote out my pattern! I was getting a lot of hits on my infamous toilet seat cover , and I wanted to make a new one with “improvements,” so I paid attention and wrote things down as I made the new one. This was originally based off the Potty Mouth toilet cover , but I altered it to fit over the seat instead of the lid. Yarn: any worsted weight yarn, about 120 yards (this is a really tight number, I used exactly 118 yards. My suggestion is to make sure you have about 130 yards.) I suggest using acrylic yarn because you’re going to be washing this often. Needle: I used US 8, but you can use whatever needle size is recommended by the yarn you’re using. Gauge: Not that important. Mine was 4 sts/1 inch in garter stitch. 6 buttons (I used some leftover shell buttons I had in my stash) tapestry needle Crochet hook (optional) Cover: Using a provisional cast on, cast on 12 stitches. Work in garter st until liner measures

Grace Livingston Hill romances free to read online

I wanted to update my old post on Grace Livingston Hill romances because now there are tons more options for you to be able to read her books for free online! I’m a huge Grace Livingston Hill fan. Granted, not all her books resonate with me, but there are a few that I absolutely love, like The Enchanted Barn and Crimson Roses . And the best part is that she wrote over 100 books and I haven’t yet read them all! When I have time, I like to dive into a new GLH novel. I like the fact that most of them are romances, and I especially appreciate that they all have strong Christian themes. Occasionally the Christian content is a little heavy-handed for my taste, but it’s so interesting to see what the Christian faith was like in the early part of the 20th century. These books are often Cinderella-type stories or A Little Princess (Frances Hodgson Burnett) type stories, which I love. And the best part is that they’re all set in the early 1900s, so the time period is absolutely fasci

ひとり寿司第25章パート2

「ひとり寿司」をブログに連載します! ひとり寿司 寿司シリーズの第一作 キャミー・タング 西島美幸 訳 スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。 ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。 そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。 エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。 レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり —— 過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。 *** ビーナスはベンの視界をさえぎった。「ここは大丈夫だから、もう帰っていいわよ」 「でも——」 ビーナスは、また彼の目の前でドアを閉めた。 「何——」 ビーナスはレックスの言葉をさえぎり、ドアの隣の窓から外をのぞいた。「よかったわ、レックス、エイデンが来てくれて。あなたの巻き爪を全部切ってくれるわよ」ビーナスの声が小さい部屋に響き渡った。 どうやって礼儀正しく答えようかと決めかねているように、エイデンの表情は少し硬くなった。多分、(そうなの?)とか(それはおもしろいね)とでも言う

Camy Tang's November newsletter

My Camy Tang (Christian Contemporary Romantic Suspense) newsletter went out this week, but in case you missed it, the link is below. In my newsletter this month, there’s an update on my personal life and publishing schedule, and I also linked to a blog post about what the TV show Supernatural has to do with GONE MISSING, the 6th book in my Sonoma series Click here to read my Camy Tang newsletter for November. I also forgot to post the link for the October newsletter, so you can click here to read it.

One-Skein Pyrenees Scarf knitting pattern

I got into using antique patterns when I was making the scarf my hero wears in my Regency romance, The Spinster’s Christmas . I wanted to do another pattern which I think was in use in the Regency period, the Pyrenees Knit Scarf on pages 36-38 of The Lady's Assistant for Executing Useful and Fancy Designs in Knitting, Netting, and Crochet Work, volume 1, by Jane Gaugain, published in 1840. She is thought to be the first person to use knitting abbreviations, at least in a published book, although they are not the same abbreviations used today (our modern abbreviations were standardized by Weldon’s Practical Needlework in 1906). Since the book is out of copyright, you can download a free PDF copy of the book at Archive.org. I found this to be a fascinating look at knitting around the time of Jane Austen’s later years. Although the book was published in 1840, many of the patterns were in use and passed down by word of mouth many years before that, so it’s possible these are p

Lady Wynwood's Spies, volume 4: Betrayer is here!

The latest volume in my Christian Regency epic serial novel is released! Here’s the back cover description of Lady Wynwood’s Spies, volume 4: Betrayer : A Christian Historical Adventure set in Regency England with romance and a supernatural twist Part four in an epic-length serial novel Beleaguered spies Lady Wynwood’s team of spies are trying to heal from the physical and mental wounds recently dealt to them. However, their investigation into Apothecary Jack’s mysterious group has turned up only a few strange, disjointed clues, and the dangerous Root elixir continues to circulate in the London underbelly. It is only a matter of time before the Root is sold to Napoleon, which would give him overwhelming dominance in the war. Sudden threats Then Laura, Lady Wynwood, is unexpectedly attacked by a man she had trusted. Although Phoebe and her household staff manage to protect her, her life is now in danger and she must go into hiding. Dangerous mysteries Laura uncovers more

Join Camy's Patreon!

At the moment, I’m releasing all my books in Kindle Unlimited, which requires my books to be exclusive to Amazon. However, I wanted to accommodate readers who prefer other ebook distributors and also reward my fans who might like my books a little ahead of schedule. ​So I started a Patreon where patrons will get BookFunnel links to download my latest ebooks about 2-3 weeks ahead of the release date. The ebook files are DRM-free and BookFunnel is great about helping you to load it onto your ebook reader or phone/tablet or computer. My Patreon is “per creation,” which means you won’t be charged every month. You will only be charged when I’ve posted a new book. For example, if I post a book on April 15th, you’ll be charged on May 1st. But if I don’t post a book in May, you won’t be charged on June 1st at all. This is because with my health problems, and since some of my books are over 100,000 words each, I’m not able to write a book a month, and I certainly don’t want to charge my