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「ひとり寿司」をブログに連載します!
ひとり寿司
寿司シリーズの第一作
キャミー・タング
西島美幸 訳
スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。
ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。
そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。
エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。
レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——
過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。
9
リチャードは死んだも同然。彼の死は、百パーセント確実だ。
レックスは鍵を鍵穴に押し込み、家の中へ入った。何か大きな音を立てて壊したい衝動に駆られたが、父親が眠っていた。
「おかえり、レックス」
「あれ、お父さん? まだ起きてた?」レックスはドアを閉め、バッグをソファの上に落とした。
父は、リクライニングチェアの中で上半身を起こそうと、もがいている。「デートはどうだった?」
レックスは、スタイロフォームの持ち帰りボックスをにらんだ。「残りをテイクアウトしてきた」他に言えることは何もなかった。
父はため息をついた。「いい男かもしれないと期待してたんだが」
レックスはキッチンへ行く途中で固まった。彼女がイン・シンクに夢中だった時でも、父は、彼女の恋愛に関心を持つことはなかった。「どうしてよ?」
父は腕を下に降ろしたまま肩をすくめ、上下させた。
それは、父が何かを隠している時にするしぐさだった。
「どうして突然興味を持ち出したのよ、お父さん?」レックスは、彼がその質問を避けられないよう、鋼鉄のように重々しい声で尋ねた。
父は横目でレックスを見た。レックスは腕を組んでいる。
「もう寝るよ」リクライニングチェアから起き上がった。
レックスは戸口から廊下へと滑るように動き、自分の体で父をさえぎった。唇を固く閉じ、にらんでいる。
いつも上手くいくわけではないが、その夜は成功した。そこに立っている父は、落胆しているように見えた。「おばあちゃんから電話があったよ」
レックスは目を閉じ、ドアに頭をぶつけたい衝動に駆られた。「何のことで?」
「お前がデートに出かける回数が少ないって、文句を言ってた。努力が足りないとさ」父はレックスの顔を見ようともしない。
「他には?」
父は長い間、答えなかった。レックスは、父が、自分に言いたくないどんなことを祖母から聞かされたのだろうかと思った。とうとう父はため息をついた。「ちょっと努力して、いい男の子と付き合えないものかな? おばあちゃんを喜ばせると思って」
刀でお腹を突き刺されたように、その言葉が刺さった。一瞬、胃が引きつった。レックスは軽く息を吸った。
これまで、父が彼女に何かを頼んだことはなかった。一度も。いつも自分のやりたいようにさせてくれた。リチャードに対し自分の立場を堅持することを許し、大学でも好きなことを選ばせてくれた。
まるで、ひざまずく戦士のようだ。
「分かってるわ、お父さん。誰か見つける」のどの中は苦しいが、その口調は強く、確信を持っているように聞こえた。
父は昔に戻ったように笑った。足を引きずって寝室へ向かう父のため、レックスは脇へよけた。
「ああ、レックス」その声は、狭い廊下を渡ってこだました。「トモヨシさんから電話があったよ。君に謝っておいて欲しいということだったが、どうも女子チームのスポンサーになれないそうだ」
(ええっ?)レックスは振り向いて父を見つめた。聞き間違えただろうか? 「だめだって言ったの?」
父はうなずいた。「どうしてあの人に頼んだんだ? おばあちゃんはサポートしてくれないのか?」
「ええっとね……」レックスの心は混乱した。「マリコの結婚式の後で、そうなる可能性があるの。だから念のため他の人にも聞いておこうと思って」大変だ! 祖母がこのことを知ったら? 「だけど、何も言わないでね、お父さん、お願い。おばあちゃん、本当にサポートする気がないのか分からないから、私が他のスポンサーを探してるって知ったら、気を悪くするかもしれないでしょ」
父はうなずいて、あくびをしながら廊下の向こう側へ戻っていった。
やれやれ、これでいい。祖母に知られたらどうなるかなど、考えたくもなかった。
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