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ひとり寿司第3章パート2




「ひとり寿司」をブログに連載します!


ひとり寿司



寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。

***


トリッシュはさっさと背を向けたが、ジェニファーは、その優しい笑顔を正義の純潔で輝かせている。

レックスはチラッと見た。ジェニファーを見ていると、いつも自分は良くないクリスチャンであるような気がする。「うちに帰るね。掃除をしなきゃ——大変、バッグを中に忘れたわ」唇を固く閉じた。心の中では、レストランの中に戻ったら、胸の谷間がないと言って祖母にこき下ろされているのを聞いた人たち全員と対面するという考えに、縮み上がっていた。

「私もよ。一緒に行くわ」トリッシュの表情は、同情で輝いていた。レックスの肩に触れる手前で止まった——レックスはさわられるのが大嫌いだということを知っていたから。

「行く必要ないわよ。取ってきたから」ジェニファーは、トリッシュの大きなホーボーバッグ、ビーナスのプラダ、レックスのバックパックに手を伸ばした。

「サンキュー、ジェン」相変わらず気がきく。レックスは、少し前にジェニファーの霊的成熟度のことについてイライラしていたことを思い、胸が痛くなった。

「じゃあね、みんな」ジェニファーは車に乗り込み、ビーナスも自分の車を探しに行った。

トリッシュは、レックスと一緒に自分の古いホンダの方に歩き始めた。

「バイバイ」

レックスは乗り込む前に立ち止まった。「教会で会うよね?」最近、トリッシュは教会に来ないことが多い。

「うーん……そうね。じゃあ、また」トリッシュは、レックスの車の隣に停めたスポーティなRAV4の中へと急いだ。

レックスは一瞬それを見つめ、それから車に乗ってキーを回した。

エンジンがブルンと音を立てたと思ったら、そのまま止まってしまった。

レックスはもう一度、回した。(カチャッ、カチャッ)

ヘッドレストに倒れかかった。「うそでしょ?」車から飛び出して、トリッシュが走り出す前に、運転席の窓を叩いた。「トリプルA持ってる?」

「冗談でしょ?」トリッシュは携帯を引っ張り出し、財布の中のカードを探した。「あなたって本当にケチね。そんな死にそうな車に乗ってて、路上サービスに加入してないの? おまけにまだお父さんと暮らしてるし——」

「そうよ。だけど、あと数ヶ月したら、自分のコンドミニアムを買えるぐらいの貯金が貯まるの。その時笑うのは誰かしらね」

トリッシュは車から出た。レックスは、トリッシュが携帯でトリプルAと話している間、トランクにもたれていた。

別のいとことその夫、二人の子供がレストランから出てきた。そろそろパーティは、お開きなのかもしれない。

家族の者たちがレックスとトリッシュを通り過ぎていく中、いとこの一人が用心深い目でレックスを見た——優しく若い母親らが、動物園で蛇の区画を通る時に子供達を急がせるように。そのいとこの夫も、子供達を急かして車に乗り込みながら、さっと手を振っただけだった。

レックスは背を正した。トリッシュも。「見た——?」

年配の叔母と叔父もレストランから出てきた。レックスとトリッシュの横を通り過ぎつつ、叔母は重苦しく非難めいた表情をレックスに向けた後、フンと気取った顔を見せた。

トリッシュは息を呑み、車のトランクを叩いた。「あのばばあ……」

レックスは目をそらした。職場やバレーボールでは、他人に何と思われていても気にならないのに、叔母の表情に何故これほど深く切り刻まれる気がするのだろう? 親類の女性がたった一人、一度だけ見せた表情なのに、餅つきの杵でもち米を叩くような一撃を体に受けたかのようだった。レックスはへこみ、傷ついた。彼女は、他の人と比べてそんなに変わっているのだろうか?

(やめよう。私には何も悪いところはない)レックスは自分のムードを振り払った。彼女は強く、頑固で、気を悪くしても気にしない。「おばあちゃんの言うことに妥協したくないだけ。押しつけられたくないの」

「そうね、だけどチームの子たちは、あなたにとってどれくらい大事なの?」

レックスはため息をついた。「この前、一人の子のお母さんがね、あの子たちがプレイオフの遠征をとても楽しみにしてる、って言いに来たの。私のお母さんが高校でそのお母さんのコーチをしてた時は、お金がなくて行けなかったんだって。四ヶ月後におばあちゃんの資金援助が切れたら遠征に行けないなんて、どうやってそのお母さんに言えばいいのよ?」

トリッシュは何も言わなかった。

「だけど、いい孫のふりをして、ボーイフレンドの腕にぶら下がって素直にマリコの結婚式に行ける?」

トリッシュは、ドレスの透けたリボンを指でつまんだ。「ねえ、それに……デートする覚悟はできてるの?」

レックスはその優しい口調に緊張を覚え、同時に手と、胸郭のちょうど下あたりが震え始めた。「ええ、そう思うわ」

「おばあちゃんにあのことを話してもいいのよ」

「だめ、誰にも言わないわ。八年前のことよ」

トリッシュはその厳しい口調にまばたきした。

レックスはすぐにその口調を弱めた。「ごめん——」

「いいの、謝らなくていい。分かるから」

もちろんだ。トリッシュは他の誰よりも理解していた。病院、警察の調書、三年間のカウンセリング——他の家族は何が起こったのかを何も知らないが、彼女はすべてのことを通してレックスのそばにいてくれた。必要な時にトリッシュがそこにいてくれたから、レックスは安心していられたのだ。

「実際そんなに悪くないと思うし」

トリッシュは、疑い深そうにレックスを見た。「ふーん」

「本当よ。キンムンをデートに誘うつもり」

トリッシュの目が顔から飛び出た。「うそ! やっとだね」

「でしょ? 絶望すると、厚かましくすごいことができるのよ」

思慮深い表情が浮かんだ。「彼が誘いに乗ると思う? あなたたち何十年も友達なのに…… 」

「私の年を責めないでよ。あなただって、私より三ヶ月若いだけなんだから」

「はい、はい、はい、それで——?」

レックスは、下腹部にとどまった些細な疑いを押しのけた。祖母のようにしつこい。「私のことを仲間以上の人として考える機会を、彼にあげてなかっただけなのよ」

トリッシュは、それを理解するのに少し時間がかかった。「ああ……なるほどね」

「その間に、女子チームのスポンサーになってくれそうな友達を探すわ。そうしたら、おばあちゃんの資金カットも心配しなくていいから」

「見つかると思う? あなたは、石からでもお金を引っ張り出すおばあちゃんみたいなビジネスウーマンじゃないのよ——」

「やると決めたら、やるわ。論理的かつ魅力的にね」

トリッシュは中立的な表情のままだった。

「私だって、魅力的になれるのよ」レックスは、にらんだ。

トリッシュはまばたきしたが、何も言わなかった。

「そんなに難しいかなあ?」

トリッシュは高笑いした。

「もう、うるさい」

***

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