Skip to main content

ひとり寿司第3章パート1




「ひとり寿司」をブログに連載します!


ひとり寿司



寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。

***




トリッシュはイライラした。彼女を落ち着かせようと、レックスはトリッシュの脇に手を回した。レックスにとってもミミはお気に入りではなかったが、二人の間に入って猫のけんかをやめさせる気分ではなかった。

「ずっとそこにいたの?」トリッシュの声は、ほとんどうなり声に近い。

ミミは、軽率そうな素ぶりで細い肩をあげた。「おばあちゃんがここまで引きずられてきてる時に『私もいます』って発表する暇はないでしょ」

「おばあちゃんを完全に避けたかっただけなんじゃないの」かすかなあざけりを帯びたビーナスの唇が曲がった。

「当たり。気が狂って、あんな最終通告を出されるぐらいならね」ミミは、小さい手でレストランの方向を指した。そしてその手を止め、目を細くして、凝った装飾が施されたドアを見つめている。「私も自分を守らなきゃ」

何故か、不吉な予感がする言い方だ。

ミミは、二二歳という妬ましいほど元気な一四四センチの小さい体を揺らしながら、さっそうと歩いていった。

(待って)レックスは心の中で自分をひっぱたいた。「三○歳は年増じゃない、おばあちゃんが何と言っても」

ビーナスがその繊細な眉をつり上げた。「どうでもいいけど、マリコが結婚したら、いとこの中ではあなたが一番年上の独身女性よ」

内輪の肩書きは、OSFC(Oldest Single Female Cousin)=「いとこの中で一番年上の独身女性」。(万歳!)

「今頃なんだっていうのよ? いつも誰かの粗探しをする人だけど、ここまでひどくなかったわ」

トリッシュが手を上に放り上げた。「マリコが七年間OSFCだったからよ。おばあちゃんは、婚約するまでマリコのことで小言を言ってたじゃない」

ビーナスが鼻先で笑った。「どうしてそんなに早く結婚すると思う?」

レックスは頭をかいた。「妊娠したんじゃなかった?」

トリッシュとビーナスがうなるような音を立てた。ジェニファーはその笑顔がV字形になるまで唇を噛んだ。

ビーナスは、そのうんざりするほど綺麗な目に思慮深い光を浮かべて、レックスを見つめた。「どうして豊胸手術をする、って言わなかったの? そうすれば、おばあちゃんはあの最終通告のことを忘れるかもしれないわ」

「絶対いやよ! みんなに言いふらされるわ」

ジェニファーの眉にシワがよった。「だけど……他の人にどう思われてるかなんて、あなた、気にしたことなかったじゃない」

「胸元を見つめられたこともないわ」

ビーナスが細い肩をあげた。「ちょっとパッドを入れるのがそんなに悪い?」

「うるさい、D75」レックスは、にらんでいる。

ビーナスは鼻先で笑った。「いつもD75だったわけじゃないわ」

「そうそう、突然、ゴージャスな女に花咲いたからって、一緒にいて楽しい人になるわけじゃないし」

ジェニファーは息を呑んだが、ビーナスとトリッシュはただ笑った。

「じゃあ、私の言うことを聞いたら?」ビーナスの完全に楕円形の顔が、静かな理性を放っていた。「太りすぎてたから、胸囲なんて気にならなかったのよ。あの胃腸ウィルスは最高だったわ。おかげでD75におさまった時には、自分に自信が持てるようになったもの」

レックスが、まだトレーニングブラを卒業していなかったことを思えば、あまり参考にならない。「二五歳の時にあなたが減量したことと、私が三○で手術をすることは同じじゃないわ」腕を組んだ。「それに、豊胸手術は協定違反よ」

ビーナスも腕を組んだ。「それは違う」

「OSFCっていうタイトルが当てはまるようになったとき、マリコみたいにやけくそになって行動しない、って誓ったじゃない。マリコはやけくそだった。豊胸手術もそうよ、違う?」

「ちょっと待って」ジェニファーがみんなの顔をチラッと見た。「恋愛生活のことは神様に任せる、って誓ったよね」

レックスは少し考えた。「ああ……それもあった」だけど、それはもう守っているのではなかったか? 神様が完璧な男性を送ってくれるまで、ただぼんやりと待つことには何の問題もない。誰かと親密な関係になるなんて、考えるだけで少し怖かった。八年経った後でも。いつかは立ち直るだろうが、その時が来るまで、デートなんてしなくていい。

今日までは……。

「独身は恥ずかしいことじゃないって、はっきりさせたよね?」ジェニファーは深く息を吸って、大胆に言った。「私たちには、結婚や子供より大事なことがあるの」

「それだったら……」レックスは顔をしかめた。「おばあちゃんの最終通告は協定違反だわ。私の女子バレーチームを裏切ることはできない——プレイオフに出られるチャンスもあるの。四ヶ月で独身をやめなきゃいけないんだったら、ただぼんやり待ち続けて、私の恋愛生活を神様に託すことなんて、ちょっとできないわ」

ジェニファーは眉にシワを寄せ、口を開いたが、ビーナスが割り込んだ。「どうしたのよ、私たちはあなたのことが分かってる。おばあちゃんの要求に黙って降参しないよね?」

「だけど……」レックスは石を蹴った。「他にチームのスポンサーになってくれる人がいないか、考えてるの」

「そうよ、おばあちゃんの最終通告を避けて通る道があるかも」

「それに、レックスだけじゃないのよ」ジェニファーがみんなを見回した。「私たちの協定を再確認したほうがいいわ。今みたいにおばあちゃんがしつこい時は、特にね」

レックスはうなずいた。「私たちはおばあちゃんに遊ばれるバービー人形じゃない」

ジェニファーの目が固い決意で光った。「私たちは、恋愛生活を神様に託します」

「それから、OSFCになっておばあちゃんに攻撃されるからと言って、やけくそになってデートをしないことを約束します」ビーナスはそのスレンダーな腰に手をおいた。

レックスにとっては可能なことだった——やけくそになってデートに走るなんて、そもそもしない。勇気を奮い起こさないと、デートなんて無理だ、絶対。

「協定?」ビーナスは手のひらを上にして手を突き出した。

「協定よ」レックスはその手を上から押さえた。ジェニファーはその上に自分の手を置いた。

「トリッシュ?」ビーナスが眉を吊り上げた。

「はいはい、分かったわ」トリッシュが加わった。

そうして彼女らは別れた。

***

電子書籍
アメリカKindle
日本Kindle
Apple Books
Kobo/Rakuten
Google Play
印刷本
アメリカAmazon
日本Amazon

Comments

Popular Posts

Lavender hand lotion

Captain's Log, Stardate 11.05.2009 I have to tell you, I LOVE Etsy.com ! Etsy is dedicated to providing a marketplace for people who like to make handmade products and people who appreciate them (and buy them). It has everything from handmade gifts (like my mom’s Bucilla Christmas stockings and ornaments and tree skirts and wall hangings and … well, just click here to see what she has! ) to soaps and lotions and jewelry and knitted items and hand-painted yarn and ... I could surf that website for DAYS. Anyway, lately I’ve been concerned about the lead content in my lotions, especially since I’m using them more now that it’s turned colder and drier here in California. I have to use lotion on my hands everytime after I wash them. So I went onto Etsy and searched for organic hand lotions, and bought this lavender lotion from Lue Cosmetics . What was really nice is that the owner, Jane, sent me a direct message via Etsy right after I made the purchase to ask if I’d received it yet and ...

I sold to Steeple Hill!

Captain's Log, Supplemental Remember that romantic suspense proposal I blogged about earlier? Well, it just sold to Steeple Hill’s Love Inspired Suspense line! I am so jazzed! I am beyond jazzed! The story’s working title is Sinister Spa The story's title is Deadly Intent and here’s a blurb (but it’s probably not what will appear on the back of the book): Massage therapist Naomi Grant could use a massage herself. With her father at home recovering from a stroke, Naomi is put in charge of the family’s elite day spa in Sonoma county. The new responsibilities sit awkwardly on her shoulders, and things only get worse when handsome Dr. Devon Knightley breezes into the spa, demanding to see one of the female clients. And the woman is found dead in Naomi’s massage room. Suddenly, Naomi is a suspect and her family’s spa is shut down. How could God let this awful thing happen? Devon only needed to see his ex-wife about a family necklace she still hadn’t returned, but when she dies and...

I got my cover!

Captain’s Log, Supplemental Blog book giveaway: To enter, go to the blog links below and post a comment there. Eyes of Elisha by Brandilyn Collins Tangerine by Marilynn Griffith I GOT MY COVER!!!! What do you guys think?

Brainstorm - character occupation

Captain's Log, Stardate 03.23.2009 Hey guys, I could use some help. In my current manuscript, The Year of the Dog , which is a humorous contemporary romance, I have a minor character, Eddie. He’s my heroine’s ex-boyfriend, and they’re on good terms with each other. He’s a bit irresponsible, but not so much so that he’s a complete loser. He’s got a very easy going attitude, he forgets to pay his bills sometimes, he’s friendly and charming. He’s adventurous and fun to be around, but he’s a little forgetful sometimes, and he tends to spend a little outside his income. I need an occupation for him. What would a charming, easy going, slightly irresponsible guy do for a living? He’s not too irresponsible, because otherwise readers will wonder what in the world my heroine saw in him to date him in the first place. She was attracted to his charm, his easy going attitude (her family’s uptight, and he was a nice contrast), and his adventurousness. But his forgetfulness and irresponsibility ...

Tabi socks, part deux

Captain's Log, Stardate 07.25.2008 (If you're on Ravelry, friend me! I'm camytang.) I made tabi socks again! (At the bottom of the pattern is the calculation for the toe split if you're not using the same weight yarn that I did for this pattern (fingering). I also give an example from when I used worsted weight yarn with this pattern.) I used Opal yarn, Petticoat colorway. It’s a finer yarn than my last pair of tabi socks, so I altered the pattern a bit. Okay, so here’s my first foray into giving a knitting pattern. Camy’s top-down Tabi Socks I’m assuming you already know the basics of knitting socks. If you’re a beginner, here are some great tutorials: Socks 101 How to Knit Socks The Sock Knitter’s Companion A video of turning the heel Sock Knitting Tips Yarn: I have used both fingering weight and worsted weight yarn with this pattern. You just change the number of cast on stitches according to your gauge and the circumference of your ankle. Th...