Skip to main content

ひとり寿司第2章パート1




「ひとり寿司」をブログに連載します!


ひとり寿司



寿司シリーズの第一作

キャミー・タング

西島美幸 訳

スポーツ狂のレックス・坂井 —— いとこのマリコが数ヶ月後に結婚することにより、「いとこの中で一番年上の独身女性」という内輪の肩書を「勝ち取る」ことについては、あまり気にしていない。コントロールフリークの祖母を無視するのは容易だ —— しかし、祖母は最終通告を出した —— マリコの結婚式までにデート相手を見つけなければ、無慈悲な祖母は、レックスがコーチをしている女子バレーボールチームへの資金供給を切ると言う。

ダグアウトにいる選手全員とデートに出かけるほど絶望的なわけではない。レックスは、バイブルスタディで読んだ「エペソの手紙」をもとに「最高の男性」の条件の厳しいリストを作った。バレーボールではいつも勝つ —— ゲームを有利に進めれば、必ず成功するはずだ。

そのとき兄は、クリスチャンではなく、アスリートでもなく、一見何の魅力もないエイデンを彼女に引き合わせる。

エイデンは、クリスチャンではないという理由で離れていったトリッシュという女の子から受けた痛手から立ち直ろうとしている。そして、レックスが(1)彼に全く興味がないこと、(2)クリスチャンであること、(3)トリッシュのいとこであることを知る。あの狂った家族とまた付き合うのはごめんだ。まして、偽善的なクリスチャンの女の子など、お断り。彼はマゾヒストじゃない。

レックスは時間がなくなってきた。いくら頑張っても、いい人は現れない。それに、どこへ行ってもエイデンに遭遇する。あのリストはどんどん長くなっていくばかり ——

過去に掲載済みのストーリーのリンクはこちらです。

***




祖母は、レッドエッグアンドジンジャー・パーティの最中に「豊胸手術」と大声で言っただけではなかった。

長く苦しい一瞬だった。レックスの鼓動は止まり、その後、ナスカー・レースのようなスピードで再び打ち始めた。振動するハンドルにしがみついているように、手が震え、こわばった。だが、祖母を操縦するのはどうしても無理。情けない。

レックスは深く息を吸い、戦闘のために身を固めた。「おばあちゃん、そのことは、また今度話そう」

祖母の目が鋭くキラッと光った。「どうして? そんな塩のシェーカーみたいなんじゃ、男の子が寄りつかないのは当然よ」

塩のシェーカー???

祖母は、「レックスのおばあちゃんが何でも直してあげる」という表情をしていた。その眼差しが下の方で止まった。「サイズは? Aカップかしら? 大丈夫よ、友達のミセス・チャングを知ってる? あの人の二回目のご主人は……」

(おばあちゃん、外に出ましょう。今すぐ)レックスは、祖母の体を取り押さえて運び出し、そこで絞め殺すという素敵な白昼夢をもてあそんだ。

現実に戻り——祖母を乱暴に扱うなんて不可能だ。一見、デリケートに見える老婦人なのだから。

応援が要る。祖母が怒鳴っているので、レックスのいとこ達が寄ってくるはず。騎兵隊はどこにいるのか?

いたいた、いくつかテーブルをはさんだところでしゃべっている。レックスが瀕死の危機にさらされているというのに。トリッシュの体はレックスの方を向いていたが、隣のテーブルにいる男の子に気のある素ぶりで横目を流している。レックスは手をあげて振った。

「手を振り回すのをやめて、レックス。ちゃんと聞きなさい。ミセス・チャングがご主人を連れて来てるはずだから」

「だけど私のドレスが……」かたまりかけているソースが胸骨の上で不気味な弧を描いていた。

「今ここで診察するわけじゃないのよ」祖母の理性的な口調は、コールでアイラインを描いた頑固な目つきに隠された、残忍で精神異常者のような心と正反対だ。

レックスはやけくそになって、トリッシュの方を見ながら両腕を高く上げて振った瞬間——少なくとも、このタイトなワンピースを着ながらできる限り高く——椅子から立ち上がろうとした中年男性のあごを引っぱたいてしまった。「きゃっ、ごめんなさい」

ついに、トリッシュがこっちを見た。

やっと! レックスは目を大きく開き、祖母の方に頭を振りながら、「助けて!」とメッセージを送った。

トリッシュの表情は数ミリ秒のうちに好奇心から恐怖へと変わっていった。ビーナスとジェニファーを軽くつつき、ぎゅうぎゅう詰めの椅子に体当たりしそうになりながら、必死でいとこの方へ行こうとした。ビーナスはもっと上品についていった。ジェニファーは叉焼包のように目を大きくして、影のようにビーナスの後を追った。

「おばあちゃん!」トリッシュは高い声で嬉しそうなふりをした。

祖母はトリッシュをにらんだ。「何よ?」

言葉に詰まり、元気一杯のトリッシュは一瞬にして凍りついた。「あの……」

まずい。先月、いとこのベビーシャワーにパンクロックのミュージシャンを連れてきて、そのへそピアスで二歳児を遊ばせたトリッシュのことを、明らかに祖母はまだ赦していないようだった。

「こんにちは、おばあちゃん」イライラしてにらむ祖母とトリッシュの間に、ビーナスが割って入った。「ちょっとレックスに話があるんだけど」

「ダメよ、私が今、話してるの。何でそんなにせっかちなの? 来なさい、レックス。ミスター・チャングのところへ行くわよ」

「おばあちゃん、豊胸手術なんてしたくないの」歯を食いしばりながらささやくのはむずかしい。

心配そうなトリッシュの目は、デフコン5の防衛準備状態に入ったかのような恐れに変わっていった。ビーナスは目をグルッと回している。ジェニファーの顔は青白くなった。

祖母の目は、中国の大包丁のように冷たくなった。「話にならないわね。アイロン台みたいに平らな女と誰が付き合いたい、って言うのかしら」

「おばあちゃん!」トリッシュの高い声が、食事の騒音を突き刺した。

「おばあちゃん、お願いがあるの」ジェニファーの柔らかな声が防火用毛布のように緊張をほぐした。

「車の中に色見本があるんだけど、お母さんがキッチンのカーテンを何色にするか決められないのね」

祖母のブルドッグのような表情は、ミス・マープルのスイートなうわべのように溶けていった。「もちろんいいわよ、喜んで」

レックスは信じられないというように、混雑を通り抜けてドアの方へ祖母を連れて行くジェニファーを見た。祖母は少し足を引きずっている——そうだった、さっきもお尻の右側をかばっていた。

「何も言わないで」ビーナスはジェニファーを追おうと振り返りながら、レックスの肩を軽く突いた。「駐車場に行ったら、おばあちゃんとの対決から逃げるんじゃないわよ」

「そうよ、おばあちゃんは忘れてないわ」トリッシュは手錠をかけるようにレックスの腕をつかんで引っ張り、ビーナスの後を追った。

レックスは、ジロジロ見ている親類や家族ぐるみの友人を通り過ぎて、テーブルの間をくねりながら、マリー・アントワネットになったような気がしていた。ギロチンと、完璧に筋が通らない祖母とは、類似点があり過ぎた。

ジェニファーの車の前で、いとこ達に合流した。

「ごめんなさい、おばあちゃん」ジェニファーは、トランク中を探し回るのをやめ、背筋を伸ばした。

「会社に色見本を忘れたみたい。パーティに間に合うように急いでたから」

おっと、ジェニファーはそんなことを言うべきではなかった。目を細め、レックスに鋭い表情を向けた祖母は、ジェニファーの手を軽く叩いた。「一応あなたは時間通りに来たものね」

もうやめて。「ごめんね、おばあちゃん。さっきも言ったけど、バレーボールをしてたのよ——」

「あなたはバレーボールに使う時間が多すぎるわ。メイ叔母さんが言ってたわよ。バレーボールで頭を打たれ過ぎたからボーイフレンドができないんだって」

(自分へのリマインダー:メイ叔母さんに口輪をはめること)

***

電子書籍
アメリカKindle
日本Kindle
Apple Books
Kobo/Rakuten
Google Play
印刷本
アメリカAmazon
日本Amazon

Comments

Popular Posts

Brainstorm - character occupation

Captain's Log, Stardate 03.23.2009 Hey guys, I could use some help. In my current manuscript, The Year of the Dog , which is a humorous contemporary romance, I have a minor character, Eddie. He’s my heroine’s ex-boyfriend, and they’re on good terms with each other. He’s a bit irresponsible, but not so much so that he’s a complete loser. He’s got a very easy going attitude, he forgets to pay his bills sometimes, he’s friendly and charming. He’s adventurous and fun to be around, but he’s a little forgetful sometimes, and he tends to spend a little outside his income. I need an occupation for him. What would a charming, easy going, slightly irresponsible guy do for a living? He’s not too irresponsible, because otherwise readers will wonder what in the world my heroine saw in him to date him in the first place. She was attracted to his charm, his easy going attitude (her family’s uptight, and he was a nice contrast), and his adventurousness. But his forgetfulness and irresponsibility ...

I sold to Steeple Hill!

Captain's Log, Supplemental Remember that romantic suspense proposal I blogged about earlier? Well, it just sold to Steeple Hill’s Love Inspired Suspense line! I am so jazzed! I am beyond jazzed! The story’s working title is Sinister Spa The story's title is Deadly Intent and here’s a blurb (but it’s probably not what will appear on the back of the book): Massage therapist Naomi Grant could use a massage herself. With her father at home recovering from a stroke, Naomi is put in charge of the family’s elite day spa in Sonoma county. The new responsibilities sit awkwardly on her shoulders, and things only get worse when handsome Dr. Devon Knightley breezes into the spa, demanding to see one of the female clients. And the woman is found dead in Naomi’s massage room. Suddenly, Naomi is a suspect and her family’s spa is shut down. How could God let this awful thing happen? Devon only needed to see his ex-wife about a family necklace she still hadn’t returned, but when she dies and...

I got my cover!

Captain’s Log, Supplemental Blog book giveaway: To enter, go to the blog links below and post a comment there. Eyes of Elisha by Brandilyn Collins Tangerine by Marilynn Griffith I GOT MY COVER!!!! What do you guys think?

Chinese Take-Out and Sushi for One

Captain’s Log, Supplemental My agent sent me an article from Publisher’s Weekly that discussed this incident: Chinese Take-Out Spawns Christian Controversy And here’s also a blog post that talks about it in more detail: The Fighting 44s This is Soong-Chan Rah’s blog: The PCS blog In sum: Apparently Zondervan (yes, my publisher), who has partnered with Youth Specialties, had put out a youth leaders skit that had stereotypical Asian dialogue, which offended many Christian Asian Americans. In response to the outcry, Zondervan/Youth Specialities put out a sincere apology and is not only freezing the remaining stock of the book, but also reprinting it and replacing the copies people have already bought. I am very proud of my publisher for how they have handled this situation. The skit writers have also issued a public apology . (I feel sorry for them, because they were only trying to write a funny skit, not stir up this maelstrom of internet controversy. I’ve been in youth work long enou...

Excerpt - A HUNDRED YEARS OF HAPPINESS by Nicole Seitz

Captain's Log, Stardate 03.05.2009 Update: Sorry, this giveaway is closed. A Hundred Years of Happiness by Nicole Seitz A beautiful young woman. An American soldier. A war-torn country. Nearly forty years of silence. Now, two daughters search for the truth they hope will set them free and the elusive peace their parents have never found. In the South Carolina Lowcountry, a young mother named Katherine Ann is struggling to help her tempestuous father, by plunging into a world of secrets he never talks about. A fry cook named Lisa is trying desperately to reach her grieving Vietnamese mother, who has never fully adjusted to life in the States. And somewhere far away, a lost soul named Ernest is drifting, treading water, searching for what he lost on a long-ago mountain. They're all longing for connection. For the war that touched them to finally end. For their hundred years of happiness at long last to begin. From the beloved author of The Spirit of Sweetgrass...